2015 Fiscal Year Research-status Report
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26380352
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
久保 公二 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, バンコク事務所, 研究員 (00450528)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ドル化 / 外国為替制度 / 国際情報交換 ミャンマー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年9月から平成28年2月にかけて、輸出入企業の外貨保有動向に関するアンケート調査を実施して、240社の個票データを収集し、以下の点が確認された。 第一に、輸出入企業ともに、金融資産よりも在庫や売掛金が資産に占める割合が高い傾向にある。第二に、決済用の資金の一部を、国内の外貨預金、およびオフショアの銀行預金として保有している企業が相当数見られた。これらの二点から、企業が資産運用のために多額の外貨資産を保有しているケースは限定的で、保有している外貨預金はもっぱら決済用の資金であることが推測された。 第三に、輸出入企業の多くは外貨両替に企業間のインフォーマル取引を用いており、銀行の利用は限定的でることが確認された。サンプル中の輸出企業の60%、輸入企業の52%は、銀行での外貨両替の経験がなかった。企業が外貨両替に銀行を利用しないことが、企業の外貨保有を促しているという構造が確認された。なお、ミャンマーの外国為替市場について、このようなミクロデータはこれまで発表されていない。次年度以降、このデータを用いて計量分析を行い、論文を執筆する。 また、この研究ではミクロ分析と並行して、ミャンマーの外国為替市場に関するマクロ経済データも収集しているが、平成27年度にはミャンマー中央銀行から、これまで非公開だった外貨預金に関する統計を入手することができた。このデータにより、ミャンマーのドル化の進行状況について他国との比較ができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度中に、ミャンマーの輸出入企業の外貨保有動向に関する240社の個票データの収集とそのクリーニングが完了したので、次年度から企業の外貨保有に関する計量分析を行う準備が整えられた。また、ミャンマーで企業が外貨預金を保有する理由の一つとして、外貨両替におけるインフォーマル市場の利用という問題が確認されたので、計量分析における問題設定が明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
外貨保有に関する輸出入企業個票データの記述統計の解析からは、銀行を利用しないインフォーマルな企業間外貨取引が、企業の外貨保有の一因となっていることが確認された。そこで、企業のどのような属性が、外貨両替での銀行利用を遠退けているのかを、計量的に分析していく。 計量分析では、被説明変数が、両替に銀行を利用するか否かという離散変数なので、プロビットモデルを使用する。ただし、サンプル数が小さいので、説明変数の選定には、交差項を利用するなど工夫する。また、プロビット分析の結果の頑強性を確認するため、Propensity Score Matchingによるデータの解析もあわせて行う。 研究成果は、East Asian Economic Association Conventionや日本金融学会などで報告し、論文の改訂を進める。 さらに、研究成果の普及のため、ミャンマー中央銀行あるいはミャンマー銀行協会にてセミナーを開催する。
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Causes of Carryover |
ドル建てで契約している委託調査について、今年度始めに想定していた為替レートよりも円高になったため、使用額が少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
企業調査のフォローアップのための旅費等に充当する。
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Research Products
(2 results)