2016 Fiscal Year Research-status Report
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26380352
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
久保 公二 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センター, 研究員 (00450528)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ドル化 / 外国為替制度 / 国際情報交換 ミャンマー |
Outline of Annual Research Achievements |
三年目にあたる平成28年度には、ミャンマー輸出入企業の外貨保有動向に関するアンケート調査から得られたデータの計量分析結果を草稿にまとめた。そして、草稿を国内外の学会で報告し、論文改訂に向けたコメントを聴取した。 ミャンマーの輸出入企業は、銀行を利用しないインフォーマルな企業間外貨取引を行うために外貨を保有する傾向がある。そこで、どのような企業がインフォーマルな外貨取引を選好しているのか、外貨両替における銀行/インフォーマル市場の選択と企業の属性との関係を、アンケート調査データを用いて分析した。企業の属性としては、インフォーマル取引の慣習化の代理変数としての企業年齢、外貨取引相手の選定に費やすことができる経営資源の代理変数としての輸出入規模、および企業の銀行との親密度の代理変数としての銀行借り入れの有無の三つに着目した。銀行での外貨取引の有無の離散変数を被説明変数としたプロビットモデルの推計からは、企業年齢は有意でない一方、輸出入規模が大きい企業が銀行とも外貨を取引する傾向が確認された。ここから、インフォーマル外貨取引は、企業の慣習に依存した選択ではないことが示唆されているとの結論を導いた。 またアンケート調査データの計量分析とは別に、並行して執筆していた二つの関連論文が査読付き雑誌に掲載された(Global Economic Review、Journal of the Asia Pacific Economy)。一本は、ミャンマー中央銀行が行っている外貨オークションがインフォーマル外貨市場の為替レートに及ぼす影響についての考察で、もう一本は、ミャンマー人移民労働者の郷里送金におけるインフォーマル送金手段の選択の分析である。何れの分析対象も、ミャンマーにおけるドル化と関連が深く、本研究課題の調査時に得た情報をこれらの論文の執筆にも活用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年目にあたる平成27年度にアンケート調査による企業個票データの収集を完了し、三年目にあたる平成28年度には、ミャンマー輸出入企業の外貨保有と強い相関のある外貨両替手段の選択についての草稿を完成し、ミャンマーのドル化の要因についてのオリジナルな発見に至った。 さらに、本研究で得た知見を活用した二つの関連論文を査読付き雑誌に公刊することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度中の国内外での当論文の学会報告では、実証分析で検証している仮説の論理的意味合いが明確でないとのコメントが得られた。これは、当論文で、分析の背景であるミャンマーの外国為替市場の構造が十分かつ簡潔に説明されていなかったことが影響していると考えられる。 最終年にあたる平成29年度には、実証分析のモデルおよび検証する仮説の論理性を明確にするため、背景描写の記述を含む構成を見直し、論文の改訂を重ねる。論文の改訂後は査読付き雑誌に投稿し掲載を目指す。
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Causes of Carryover |
平成27年度に実施したアンケート調査の使用額が当初予定より少なくなったために平成28年度に繰り越されたが、その予算の一部が翌年度に再度繰り越しになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アンケート調査のフォローアップのための旅費等に充当する。
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Research Products
(4 results)