2014 Fiscal Year Research-status Report
後発工業国企業による産業プラットフォームの構築メカニズム
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26380353
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
川上 桃子 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, その他 (30450480)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 産業プラットフォーム / 後発国企業 / エレクトロニクス産業 / 台湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
「産業プラットフォーム」とは,「多くの企業がそれをもとに補完的な製品,技術,サービスを開発する基礎となるような製品,技術,サービス」のことであり,それを提供する企業は,産業のイノベーションの方向や速度,付加価値の企業間配分を規定する。本研究では,2000年代以降,後発工業国である台湾のなかから「産業プラットフォーム」型の基幹部品を供給する企業が出現しつつあることに着目し,その背景を明らかにする。具体的には,台湾企業による液晶テレビ,光学ドライブ,モバイル機器向けの半導体コアチップ事業の分析を通じて,台湾の中からプラットフォーム型の基幹部品を提供する企業が出現するにいたった過程と,その背後で働いたメカニズムを解明する。 初年度にあたる2014年度は,以下の分析を進めた。第一に,台湾企業による液晶テレビ向けSoC(system-on-chip,統合度の高い半導体チップ)事業の分析を深めた。特に,台湾のSoCベンダーが上位のテレビメーカーのサプライチェーンに参入するようになった経緯について調査を行い,台湾ベンダーが幅広い顧客との取引関係を築き,プラットフォーム型の基幹部品の供給者としての地位を確立した経緯を分析した。第二に,台湾とシリコンバレーのSoCベンダーの間のリンケージ形成に関してインタビュー調査を行った。調査を通じて,両者間の協力と競争の入り交じった関係の展開について,分析材料を集めることができた。 成果の一部は「テレビ産業:アーキテクチャの転換とアジア企業間の事業モデル競争」(橘川武郎他編『アジアの企業間競争』文眞堂 2015年 所収)等として発表したほか,シリコンバレーのアジア人起業家へのインタビューをウェブ上で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,ほぼ順調に進展している。台湾,シリコンバレーでの調査では,2013年度まで実施した科研費研究「後発国企業によるイノベーションのメカニズム」の研究の過程で築いた人的ネットワークを活用し,集中的な調査を行うことができた。当初,データ会社からの購入を予定していた液晶テレビの企業別生産データや市場データについては,刊行されている産業レポートを用いてある程度代替可能であることが分かったため,行わなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度以降は,台湾での調査をさらに深めるとともに,台湾のSoCベンダーのキャッチアップの対象となった日本・米系企業へのインタビューを行う予定である。また,台湾および中国で,台湾のSoCベンダーの製品ユーザーとなった台湾・中国の光学ディスクドライブ,モバイル機器,液晶テレビのメーカーへの集中的な調査を行い,台湾系SoCベンダーとそのユーザーの間の情報共有の仕組み,相互学習のプロセスを具体的に明らかにする。あわせて,学会での報告を積極的に行う。
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Causes of Carryover |
当初,データ会社からの購入を予定していた液晶テレビの企業別生産データや市場データについては,刊行されている産業レポートを用いてある程度代替可能であることが分かったため,行わなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
光学ディスクドライブメーカーの企業データの購入を予定しているほか,台湾,シリコンバレーでの集中的なインタビュー調査を計画している。また,国際学会での報告,エレクトロニクス産業に関する書籍やデータの購入も予定している。
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