2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380356
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 浩 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (60275823)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 世代会計 / 高齢化 / 財政 / 財政赤字 / 少子化 / 年金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、世代間不均衡の定量分析のうち、地方財政にかかわる研究と公的年金にかかわる研究をおこなった。 1)地方財政にかかわる研究:本研究では,高齢化によって将来生じる財政上のリスクを評価するため,政策的に応用可能な指標について検討を行った。その結果,将来負担比率は従来の実質公債費比率よりもより多くの情報を含んでいるものの,高齢化によって生じる未実現の財政リスクは反映しきれていないことがわかった。このため,本稿では全国の都道府県財政を題材に「高齢化資金過不足率」を試算した。高齢化資金過不足率と将来負担比率の相関は 0.229 でありここから,将来負担比率の指標では高齢化によって将来生じる財政リスクの2割程度しかわからないことになる。また,現在の高齢化率と将来の高齢化率を比較して,高齢化の進行を示した高齢化倍率でも,4 割程度の情報しか反映されておらず,冒頭に示した高齢化の人口予測だけでは,地方自治体の将来直面する財政リスクを十分に表してはいないことがわかった。 2)公的年金にかかわる研究:本研究の目的は、「平成26年財政検証結果レポート」を年金政策評価において適切な報告であるかという観点から再評価を行うことである。当該レポートは国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通しを示した国の公式報告であり、年金政策を評価するうえで重要な報告である。レポートでは、最も良好な給付が見込まれるシナリオにおいて、2043年以降は所得代替率51.0%が確保されるとしている。しかし、当該ケースは将来では代表的でない専業主婦世帯の受給ケースであり、本研究で試算した共働き世帯では、所得代替率は40.0%となり、政府公約が満たされないことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世代間不均衡を表す指標としての世代会計よりも、世代間不均衡を通じて現行の財政政策の問題点を明らかにするという世代会計の「目的」に沿った推計と結果公表を行い、本研究の趣旨である政策的に有効な指標の条件の研究が進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
現実の政策的問題点を国民に分かりやすく示し、政策選択の情報提供に資するため、ホットなイシューである「消費税増税のタイミング」や「年金支給開始年齢引き上げ」などの具体的な政策について世代会計を通じて評価する。
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Research Products
(2 results)