2014 Fiscal Year Research-status Report
PACEとCCRCの統合による高齢者包括ケアモデル
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26380357
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
新井 光吉 埼玉大学, 経済学部, 教授 (90212604)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | CCRC / 3タイプの高齢者住宅 / 4つの契約タイプ / PACE / 協働 / 切れ目のないサービス / 専門書チーム / 終身介護付き |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究はPACE(高齢者包括ケアプログラム)を併設して高齢入居者に切れ目のない健康維持や包括ケアを提供しているCCRC(終身介護高齢者コミュニティ)を調査して実態を明らかにすることを中心にしていた。そこで、5~6月に約20団体のCCRCに調査受入を依頼するメールを送った。しかし返事が来たのは僅かで、何度かの連絡の後に調査断念に追い込まれたものもあった。その中でPresbyterian Senior LivingのCEO、S. Proctor氏から、「最近、PACEを売却して資源をCCRC部門に集中することになったので調査対象としては適切ではないが、そのPACE部門の売却先のCCRCを調査するなら紹介する」というメールを受け取った。彼が紹介してくれたのが、同じペンシルヴェニア州に所在するAlbright Care Services(Lewisburg, PA)のCEOのS. T. Smithであった。 早々に連絡を取ると、Smith氏から調査訪問を歓迎するとの返事が届き、2014年10月10日にAlbright Care Servicesを調査するために渡米した。10月13日の午前10時にAlbright Care Servicesの本部を訪問し、1時間半ほどインタビューをした後、キャンパス内の施設を2時間ほど案内してもらい、遅めの昼食を一緒に取りながらCCRCについて語り合った。自立型(IL)・支援型(AL)・介護型(NH)の3タイプの高齢者住宅、薬局、提携病院(主要道路を隔てたAlbright Care Services所有地に立地)、キャンパス内アメニティ(レストランとカフェ、美容院、パソコン室、室内温水プール、フィットネスセンター/フィットネスクラス、木工場、送迎サービス、給食、図書館、散歩ルート、マッサージ療法、銀行業務など)を見学した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PACEを併設するCCRCの調査は、準備にかなり手間取った。CCRCはもっと簡単に調査を受け入れてくれるものと楽観していたが、返信のメールさえない場合も多かった。しかし運よくコンタクトを取れたPresbyterian Senior LivingのCEO、S. Proctor氏の紹介が突破口となり、Albright Care ServicesのS. T. Smith氏の知遇を得て、彼の組織を調査できたばかりでなく、彼が親しくしている約40団体のCEOを紹介してもらった。これはAlbright Care Servicesの組織や活動に関するインタビュー、資料提供、施設見学にも優る研究上の大きな成果と思われる。Smith氏は「役に立つなら私の名前を自由に使って結構だし、またの来訪を歓迎する」と言ってくれた。 このCEOリスト以外の成果は以下の通りある。第1に、Presbyterian Senior Livingでは、PACEとCCRCの協働は5年間の経験から高齢者の自立やQOLを可能な限り維持する上で望ましいが、メディケイド償還率の引下げや煩わしい行政の許認可などの条件下では、PACEを組織内に抱え込むよりもPACE提供団体に売却してそれとのパートナーシップを発展させ、資源をCCRCに集中した方が良いという経営戦略を取っている。第2に、Albright Care Services はPresbyterian Senior LivingからPACEを買収し、CCRCとPACEの協働を更に推進しようとしている。これは加齢とともに支援や介護のニーズを高めざるを得ない高齢者のQOLを維持しようとすれば、この2つのプログラムを組織内で協働させることが重要だと考えるAlbright Care Servicesの理念に基づいていると考えられるという点である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度にPresbyterian Senior LivingのCEO、Proctor氏の紹介が突破口となり、Albright Care ServicesのSmith氏の知遇を得て、彼の組織を調査して貴重な知見を得た上に、彼が親しくしている約40団体のCCRCのCEOを紹介してもらった。このうち、Community LIFE(R. DiTommaso, Executive Director)と National PACE Association(S. Bloom, President/CEO)の2団体を2015年3月末に調査する計画を立てていたが、この時期に大学を留守にできない用事が出現し、延期せざるをえなかった。 そこで、2015年6月に、3月に果たせなかった調査を実施することを予定している。Community LIFEはペンシルヴェニアでCCRCとPACEを協働させている団体であり、Albright Care Servicesと比較すれば、興味深い知見を得られるに違いない。また、National PACE AssociationはCCRCとPACEの協働を積極的に推進しているナショナルセンターであり、この協働に関する豊富な情報を持っている組織である。その情報を得るために昨年、連絡を取ったのであるが、相手が広報担当者であったこともあり、調査訪問にまで漕ぎつけることができなかった。President/CEO の Bloom氏はAlbright Care ServicesのSmith氏の親しい友人なので、彼の紹介といって調査を申し込めば、貴重な情報を入手できるものと思われる。そして、Smith氏が提供してくれたリストにBloom氏の情報を加えて、適切と思われる調査対象を増やしていきたい。また選択した調査対象の適否を相談するためにも再度、Smith氏を訪問する予定である。
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Causes of Carryover |
2015年3月にアメリカのワシントンDCとペンシルヴェニア州のピッツバーグとルイスバーグの3か所のCCRCに関連したNPOを調査する予定であったが、大学を留守にできない事情が生じたために、2015年6月に繰り延べせざるを得なくなり、それに必要な経費(助成金)も2015年度に繰り越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2014年度からの繰り越し分は、本来、2015年3月の調査で使用される筈のものであり、調査の準備も進めていたが、どうしても大学を留守にできない事情があり、無理に調査を実施して、内容が雑になるよりも時間的な余裕がある状況下でじっくりと行った方が良い と判断した。また、ペンシルヴェニアは今年は大雪で、交通事情もスケジュール通りの調査の妨げになりそうであったことも延期の判断を促すことになった。 従って、2014年度繰り越し分は6月に使用し、2015年度分は今年の夏における集中的な調査で使用する予定である。
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Research Products
(2 results)