2014 Fiscal Year Research-status Report
景気刺激策および震災復興策としての公共投資が企業活動に与える影響
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26380361
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宮崎 智視 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (20410673)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 財政政策 / 公共投資 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず,公共投資と地域の投資および景気変動についての実証研究について説明する.ここでは,都道府県の普通建設事業費に着目し,それが地域の民間投資だけでなく,県内総生産の変動に与える影響を探った.具体的には,普通建設事業費のうち,景気要因で決定された部分とそれ以外の要因で決定された部分とを識別し分析を試みた.実証分析の結果,景気変動以外で決定された要因は,民間投資の変動については有意な影響を得られなかったものの,県内総生産の変動を大きくするとの結果を得た.この結果は,地方自治体に景気対策の一翼を担わせたり,財政再建策の一環として都道府県の普通建設事業費を増減させることは,地域の企業活動に与える影響は統計的に有意に確認されないものの,地域の景気変動そのものを大きくすることを示唆するものである. 次に1990年代およびリーマンショックに端を発する世界金融危機後になされた景気刺激策について,政策のショックを識別する作業を行った.その際,1990年代は公共投資中心,世界金融危機後は公共投資が主となっていない点に着目し整理をした.関連するデータは,マクロおよび地域両面について収集した. また,政府支出のうち,公共投資と並ぶ項目である政府消費について,その民間消費との代替・補完関係を探った.とりわけ,都道府県パネルデータを用いて,両者の代替の弾力性に着目して実証分析を行った.計量分析により,該当する民間財と代替性が強いと考えられる,現物社会給付が増加している後半に代替の弾力性がより大きく計測されるとの結果が得られた. このほか本年度は,財政改革と財政赤字の維持可能性に関する研究と,固定資産税の経済効果に関する実証研究が審査付き学術雑誌に掲載された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
景気刺激策としての公共投資については,地方の景気および民間投資動向への影響を検証し,一定の結果を得ることができた.公共投資だけでなく,政府消費についても分析を進めることで,年間を通じて視野の広い研究を行えた.この二つの研究については,国内外の学会・研究集会で複数に亘り報告をすることで,専門家から多くの助言を得た. 年度内に論文が公刊された審査付き雑誌のうち,英文誌についてはImpact Factorは0.9以上(同誌のサイトにより確認)であり,邦語の雑誌は国内でも権威ある学術雑誌の一つとして知られている.なお,政府消費と民間消費の代替・補完関係についての研究は,合評会で頂いたコメントを基に改善し,編集委員長と討論者の先生による簡便な査読の後,固定資産税の経済効果についての実証研究と同じ雑誌に掲載された.このように本年度は,一定水準以上にある審査付きの雑誌(およびそれに準ずる雑誌)に論文が三本公刊された.
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Strategy for Future Research Activity |
・次年度は,本年度に構築したデータベースを基に,景気刺激策としてなされた公共投資が民間部門の企業活動にどのような影響を与えたのかを計測する. ・その際,なるべく新しい分析手法に挑戦する. ・震災関連の研究への着手.とりわけ,兵庫県・神戸市レベルでのデータベースの整理に入る. ・研究の中間成果物については,国内は勿論,海外の学会でもなるべく複数回報告する.
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Causes of Carryover |
諸事情により,予定していた国際学会への参加をキャンセルしたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会への参加・報告のために使用する予定である.
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Research Products
(12 results)