2015 Fiscal Year Research-status Report
ベイズ推定DSGEモデルによる税制改革の分析~消費税増税と法人税減税の租税帰着
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26380367
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
林田 実 北九州市立大学, 経済学部, 教授 (20198873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 裕之 東洋大学, 経済学部, 教授 (50285459)
安岡 匡也 関西学院大学, 経済学部, 准教授 (90437434)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 財政学 / 消費税 / 法人税 / DSGE |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の最終目標は現在我が国で実施されつつある消費増税や法人減税が結局のところ,だれにどのようなルートでどの程度の負担増・負担減をもたらすことになるのかを実証的に明らかにすることである.本年度は,この目標に向けて,理論的研究と実証的研究の二つを行った.まず,理論的研究としては,熟練セクターと非熟練セクターが存在し,かつ,家計に生産性が異なる労働者がいるような経済モデルを考えた.その上で,税を通じた再配分の効果を分析した.それによると,所得税は常に所得の不平等を小さくすること,また,消費税は熟練セクターと非熟練セクターの賃金格差を増大させること,さらに,法人税は異時点間の消費が代替的であれば,所得格差を小さくすることが分かった.したがって,どのような税で再配分を行うかによって,それが経済に与える効果が異なることが示された.実証研究としては,アベノミクス下の日本経済を俯瞰できるような,10個の内生変数からなるDSGEモデルを,1990年第1四半期から2013年第2四半期までのデータを用いてベイズ推定した。その推定されたDSGEモデルに対して,生産性ショック,金融緩和ショックおよび選好ショックを与えたところ,おおむね,経済理論と整合的な結果が得られた.さらに,アベノミクスの嚆矢たるインフレターゲットショックが雇用などの主要な経済変数にどのような影響を与えうるのかを分析した.そのために,インフレターゲットショックを,期待インフレ率の定常状態からの偏差のマイナス方向へのショックと定義して,インパルス応答関数を算出した.その結果,インフレターゲットショックによって,産出量は増大し,賃金率・インフレ率ともに上昇することが分かった.雇用も改善した.これらの結果は,アベノミクス開始後の実体経済の動向ともおおむね整合的であった.来年度は以上二つの研究を融合して,最終目標に肉薄していきたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熟練,非熟練セクターと労働生産性の異なる家計からなる理論モデルを用いて,各種税金による再配分効果が異なることを示した.また,アベノミクス下の日本経済をシミュレートするDSGEモデルをMCMC推定し,生産性ショック,金融緩和ショック,選好ショック,およびインフレターゲットショックの影響を実証的に分析できた.これらは,北九州市立大学および関西学院大学ワーキングペーパーとしてすでに公開している.また,以下にあるように複数の学会発表も行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度末までに,雇用を明示的にとりこんだDSGEモデルを構築し,これを用いた実証分析を行った.また,家計の生産性の異質性をもりこんだ2部門理論モデルを用いて,税が経済に与える影響を解析した.今年度はこの二つを合体させて,実証的なDSGEモデルを作成して,課税の帰着問題に取り組んでいく.
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Causes of Carryover |
インテルの新しいCPU、Broadwell-Eが6月に発売されることが判明していたので、その購入のため、未使用金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
インテルの新しいCPU、Broadwell-Eが6月に発売されるので、これを購入し、その他必要なパーツを揃えていく。
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Research Products
(8 results)