2016 Fiscal Year Research-status Report
日本的雇用システムが夫婦の関係性、家族形成に与える影響―フランスとの比較において
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26380380
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
藤野 敦子 京都産業大学, 経済学部, 教授 (50387990)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 少子化 / 転勤 / 単身赴任 / 同一価値労働同一賃金 / 日本的雇用慣行 / 性別役割分業 / ジェンダー / 夫婦の関係性 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、2つの研究を進めた。 1つ目として、転勤・単身赴任などの日本的雇用慣行が夫婦の関係性を通し、夫婦の出生行動にどのような影響を与えているかを見るために、30-40代既婚女性3143人(今の夫との間に子どもあり、夫-事実婚パートナー含むーが一般企業正社員)に対し、「夫の転勤や単身赴任に関するアンケート」を実施した。質問項目は、就労状況、家族状況、出産意欲、夫婦の関係性、夫の転勤・単身赴任の状況などである。分析の結果から、大卒女性の夫(正社員)の場合、約60%に転勤があると回答していることが明らかになった。また夫に転勤がある場合には、大卒女性の約80%が専業主婦または非正規雇用となっていた。また、「転勤を拒絶すると昇進の見込みがなくなる」、「転勤が前提となっている働き方では、女性は活躍できない」とする意識も大卒女性に高い割合となっていた。さらに夫が転勤を伴う働き方の場合には、夫の給与に対する満足度は高いが、専業主婦の場合、育児に対する孤立感が強く、同時に性別役割分業への反対意識や育児を夫と協働で行うべきとの意識も強く持っていた。これらの研究成果は、日本ジェンダー学会大会第20回のシンポジウムにおいて報告された。また、学会誌掲載予定である。 2つ目は、同一価値労働同一賃金の調査研究である。日本的雇用慣行が維持されている背景に、日本では同一価値労働同一賃金が十分に尊重されていないことが挙げられる。当該年度では、フランスにターゲットを絞り、フランスでは、どのように同一価値労働同一賃金の概念や制度が歴史的に展開してきたかやフランスにおけるその実態や課題を考察した。その上で日本が何を参考にすべきかを検討した。この調査研究は『京都産業大学経済学レビュー』第4号にて「フランスで「同一価値労働同一賃金」原則は実現しているのか? ―フランスの実態と課題―」とし、発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、「夫の転勤や単身赴任に関するアンケート」を実施し、女性の就労・生活状況における夫の転勤や単身赴任への影響に関する分析を実施した。しかしながら、夫の転勤や単身赴任が夫婦の出生行動にどのような影響を及ぼしているかについての詳細な分析はまだ終わっていない。この分野に関しては先行研究が少なく、どのような方向性で分析していくかが十分に調査できていないためである。今後は、さらに詳しい分析を実施する必要がある。 また当初計画では、フランスにおいて同様のアンケートを実施する予定であったが、フランスに関しては、文献・資料調査のみでアンケート調査を実施するにはいたらなかった。フランスでの雇用システムの中で、賃金においては職務給体系が中心であること、配置転換や転勤等が頻繁でないことなどから、アンケート調査を実施せずにむしろフランスにおける同一価値労働・同一賃金の歴史や実態、課題などに研究調査の方向性を転換したためである。フランスのアンケート実施については、準備時間がさらに必要であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当該年度で実施してきたことを踏まえ、アンケートの対象者を夫婦から未婚の男女に向け、配置転換・転勤などの働き方が若者の結婚(カップル・家族形成)にどのように影響しているかを見ていきたいと考えている。当初は、日本において夫の転勤や単身赴任が夫婦の出生行動にどのように影響しているかを分析した後で国際比較を実施しようとしていた。しかしながら、今後は、国際比較よりもむしろ、日本において「夫婦」から「未婚の男女」に対象をうつしながらアンケート調査を実施することとしたい。その後、フランスでの同様のアンケートを実施することで、日本の働き方の「未婚の男女」の結婚行動(カップル・家族形成)への影響を国際比較の観点から分析していく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に実施予定であったアンケート調査が実施できなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度において、日本において未婚男女におけるアンケート調査を実施する。
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