2016 Fiscal Year Research-status Report
| Project/Area Number |
26380394
|
|---|
| Research Institution | Nagasaki University |
|---|
Principal Investigator |
式見 雅代 (富山雅代) 長崎大学, 経済学部, 教授 (30313456)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
| Keywords | 企業成長 / 企業金融 / 金融契約 / 資金制約 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、企業をとりまく金融環境が成長、退出等の企業ダイナミクスに与える影響について、実証的に解明することにある。特に、金融契約のダイナミクスに着目し、初期の金融契約と資金提供者との関係やそれらの動態的変化が、企業成長、存続、ボラティリティ、雇用創出等に与える影響を明らかにする。
平成28年度には、開廃業と地域金融市場の銀行間競争の関係に関する論文が、書籍の第8章として、出版された。論文では、地域金融市場が寡占的であるほど、外部資金依存度が高く無形固定資産比率の高い産業で開業率も廃業率もともに低下することを報告した。これらの結果は、地域金融市場が寡占的であるほど、情報の非対称性の高い産業では、新規参入企業の資金制約が緩和されにくく、開廃業が低迷し、経済が活性化されなくなっていることを示唆する。さらに、企業の資本構成の調整と投資行動のタイミングに関する論文を投稿し、学術雑誌に掲載された。論文では、企業は、取引費用と資本構成の調整費用を考慮し、投資スパイクのある場合に、調整を行いやすいこと、企業の資金制約の有無や企業の成長度合いによっても実物投資機会の影響が異なることを明らかにした。さらに、世界金融危機時における企業グループ内の資金移動の効率性に関する論文を国内外の学会で報告した。論文では、企業の資金制約が非常に厳しくなる金融危機時に、企業グループ内での資本移動により、資金制約が緩和するかどうかを、経済発展度合いと絡めて考察した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
創業間もない企業の資金調達環境のデータが十分揃わず、研究計画の見直しを迫られたこと、計画変更後、中小企業データベースを購入したが、全世界2億社程度の企業財務情報を収録しているデータベースであるため、データ処理に想定以上の時間を要し、計画通りに研究が進行しなかったことが理由として挙げられる。
|
| Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、本研究の最終年度であることから、総括的な研究活動を行う。まず、これまで書き溜めた論文、及び改訂中の論文3報を、今年度中に投稿し、査読付き国際雑誌への掲載を目指す。また、大学院生を雇用し、データ整理作業の支援を依頼することにより、作業のスピードアップを図る。
|
| Causes of Carryover |
当初計画で、購入を予定していたデータベースでは、本研究が必要とするデータが十分揃わないことが判明したこと、データ入力・整備の補助を行ってもらうのにふさわしい大学院生の雇用が出来なかったこと、さらに、平成28年度は学内業務が多忙を極め、研究活動に時間を割くことができなかったことが、理由として挙げられる。
|
| Expenditure Plan for Carryover Budget |
データ入力・整備作業のスピードアップを図るため、大学院生を雇用する。さらに、改定中の論文を国際雑誌に投稿する。また、現在着手している論文をまとめ、国内学会やセミナーでの報告、及び国際学会での報告を行い、フィードバックを得て査読付き国際雑誌に投稿する予定である。これらの計画のため、謝金支払い、旅費、英文校閲、論文投稿料として使用する計画である。また、現在改定中の論文で、レフリーからの指摘により、追加的なデータが必要となっているため、これらのデータの購入を予定している。
|
| Remarks |
平成28年度 長崎大学重点研究課題
|
