2014 Fiscal Year Research-status Report
個票データに基づく日本における個人の金融資産運用に関する意思決定バイアスの研究
Project/Area Number |
26380412
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
神津 多可思 関西大学, ソシオネットワーク戦略研究機構, 非常勤研究員 (40598942)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹村 敏彦 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (00411504)
武田 浩一 法政大学, 経済学部, 教授 (40328919)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 個人投資家 / 行動ファイナンス / 意思決定バイアス / 将来の物価変動率予想 / 金融リテラシー / 金融資産運用モデル / インターネット調査 / 金融教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本における個人の金融資産運用に関する意思決定についての定性的かつ定量的な分析を通じて、日本の金融市場における個人の意思決定特性を明らかにするとともに、日本の個人・家計までを対象とした金融政策ならびに金融教育に関して新たな示唆を与える知見を提示することにある。 本年度は、調査を実施する前に、これまで蓄積してきた「個人投資家の意識等に関する調査」の調査データを用いて、1) 将来の物価変動率予想に関する経年変化に関する分析、2) 個人投資家の不合理行動に関する分析、3) 個人投資家の意思決定バイアスに関する分析、を行った。1) は神津を中心として、過去3年間蓄積したデータをもとに、属性(学歴、居住地域、所得など)ごとに将来の物価変動率予想について分析を行った結果、その予想の分布の形状が各年で特徴的に異なることがわかった。2)は竹村を中心として、個人投資家の損切りのタイミングなどで観察される不合理行動に関してロジット分析を行った結果、不合理行動を行う個人投資家の特徴として、取引頻度が少ないことや短期的な予想はできないと受け止めていることなどが確認された。3)は武田を中心として、投資リテラシーが意思決定バイアスに与える影響について回帰分析などを行った結果、個人投資家の金融リテラシーと資産蓄積およびリスク資産保有の間に正の相関に加えて、個人投資家の投資経験が長く、投資頻度が高いほど、リスク資産の保有比率が高く、保有資産が多いことなどを明らかにした。 これらの分析結果を踏まえて、これまで実施してきた調査の質問項目の削除および新規追加(特に、先行研究に基づき意思決定バイアスに関する質問項目の刷新)を行い、インターネット調査手法による「個人投資家の意識等に関する調査2015」を実施した。調査終了後、これらの調査結果の分析を現在進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は定期的な議論・進捗状況の報告を2ヶ月に一度の割合で実施したため、調査票の設計および研究代表者および研究分担者の研究がスムーズに行えた。そのため、それぞれが研究成果を論文としてまとめることができた。また、そのうち2本については査読誌への投稿もなされた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、本年度に実施した調査結果を用いて、1) 将来の物価変動率予想に関する経年変化に関する分析、2) 個人投資家の不合理行動に関する分析、3) 個人投資家の意思決定バイアスに関する分析、を順次行い、それを論文化し、研究成果の公表を行う。 また、これまで蓄積してきたアンケート調査データ(個人等を特定できる情報を除く)を、研究者(非営利・学術目的利用に限定)に対する公開を、Webサイト(http://ecolab.eco.saga-u.ac.jp/invest/index.html)を介して開始する予定である。 さらに、平成27年度も、本年度と同様に、分析結果および先行研究などを踏まえて、アンケート調査の質問項目の改定を行い、インターネットアンケート調査を実施する。
|
Causes of Carryover |
平成26年度は本研究の中心的な役割を果たすインターネット調査費に費やし、その残りの部分を代表者、分担者への配分が少額となり、本年度は各人学会報告などの出張旅費が捻出できなかったため、次年度の繰越額が発生した。平成26年度は本研究計画の1年目とあり、前倒し申請も行わなかった。また、投稿する論文はいずれも日本語であったため、英語校閲費は今年度は発生しなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度の繰越額は平成27年度の各人の配分額と合わせて、学会報告や研究打合せなどの旅費をはじめ、英語校閲費・投稿料などに使用する。
|
Research Products
(4 results)