2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380414
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
松尾 順介 桃山学院大学, 経営学部, 教授 (00330340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 瑞彦 桃山学院大学, 経済学部, 教授 (10368384)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 投資ファンド / クラウドファンディング / 東日本大震災 / 金融スキーム |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実績の概要 本研究では、東日本大震災復興における金融スキームの役割について調査・研究することを目的とし、以下の3つの調査ポイントを設定した。(1)これらの金融支援の取組が東日本大震災の復旧・復興にとって、量的・質的に十分なものであるかどうか。様々な金融支援のスキームが導入されたが、東日本大震災からの復旧・復興には相当な資金が必要であり、その資金需要に十分に対応できるかどうかは必ずしも明確でなく、今後の復旧・復興の進展状況に大きく左右されうる。(2)被災企業もそれぞれに個別性があり、金融支援スキームの設計がそのような個別性に柔軟に対応できるかどうか、さらに金融支援スキームの担当者のマンパワーや専門性が十分対応できるかどうか。(3)東日本大震災では、地域経済全体が多大なダメージを被っており、地域の面的な再生も大きな課題である。被災地の事業者の復旧・復興のためには、単に金融支援だけでなく、事業計画の基盤となる面的かつ長期的な復興プランが必要である。そのようなプランが導入・実施されるかどうか。平成26年度は、(1)および(2)を中心に調査・研究を行った。現時点では、明確な結論を下すことはできないが、最近世界的に関心を集めているクラウドファンディングの手法が一部の再生事例において成果を上げていることが確認できた。これについては、『新都市』(国土交通省編集協力・都市計画協会)2015年4月号所収の拙稿「投資型クラウドファンディングの現状と地域再生における課題」において研究成果の一部を公表した。この論文では、復興途上にある被災地企業が投資型クラウドファンディングによって資金調達を行った事例を考察し、この金融スキームが単に不特定多数からの資金調達であるだけでなく、通常の金融スキーム、特に地方金融機関による貸出にも良い影響をもたらし、シナジー的な効果があることを指摘している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年、クラウドファンディングが世界的に関心を集めているが、現状では、寄付や商品・サービス購入を目的とする資金提供が中心であり、投資型の割合は必ずしも大きくない。しかし、日本では、最近投資型クラウドファンディングの案件が多数みられるようになるとともに、政府の成長戦略でも取り上げられるようになっている。そのような状況を反映し、東日本大震災の被災企業の復興資金調達にクラウドファンディングが利用される事例が見られるようになった。平成26年度は、このような企業に対してインタビュー調査を行い、クラウドファンディングの利用実態について調査するとともに、その可能性や課題を検討し、上記の論文を公刊することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、引き続き当初掲げた研究目標に即して、調査・研究を進める予定であるが、平成26年度の調査・研究の結果から、金融スキームとしてのクラウドファンディングの役割について、より詳しく検討する必要があることが明らかとなった。また、現政権では、成長戦略の一環として、クラウドファンディングの活用が重視されており、平成26年度の金融商品取引法改正など制度改革も進められている。したがって、クラウドファンディングの可能性と課題についても検討を加える必要がある。他方、平成26年度の現地調査の体験から、東日本大震災復興における金融スキームの役割を検討するためには、単に金融スキームの役割だけでなく、コミュニティや社会資本の再生についても十分に配慮する必要があることも実感した。そこで、被災地における社会基盤再生についてもより視野を深化・発展させる予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画に比べて、旅費が予算を下回ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度において、旅費および物品費として使用予定である。
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