2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380417
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
國方 敬司 山形大学, 人文学部, 教授 (70143724)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 農業革命 / イギリス / 歴史的景観の保全 / ウォータ・メドウズ |
Outline of Annual Research Achievements |
先進国における農業はわが国を含めて困難な問題を抱えている。イギリスにしても、農業問題に関し解決策が用意されているわけではないが、本研究では2つの異なる取り組みを紹介する。1つは、Water Meadowsを歴史的景観・農業施設として保全する試みであり、もう1つは、Fenにおける近代農業以前の状態への復元の試みである。両者ともに、イギリス農業革命時代に形成された農業生産の在り方が、現在にいたって異なる保存・保全方法として提起されるに至っている。 本研究では、現段階で異なる保存・保全方法が採られるに至る両者について、イギリス農業革命期におけるその土地利用方法の形成と19世紀半ば以降における農業生産の変遷の中で、今日における異なる保存・保全方法が採用される歴史的経緯を分析することを研究目的とする。 こうした研究目的の下、平成26年度は、ウォータ・メドウズの研究に注力し、イギリスにおいてウォータ・メドウズにかかわる資史料の収集と現地調査を実施した。現地調査としては、ウィルトシァのソールズベリのHarnham Water Meadowsを対象とした。こうしたイギリスでの資史料の収集や現地調査の成果から、わが国ではウォータ・メドウズについて基本的な事実でさえも理解されていないこと、たとえばウォータ・メドウズといってもBedworkシステムとCatchworkシステムという相異なる形状・仕組みのものがあり、それぞれ特有の地形や農業生産と結びついている、といった事実が認識されていないことが判明した。そこで、本年度は、ウォータ・メドウズに関する基礎的な理解に資する論稿を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、イギリス農業革命時代に形成された灌水式採草地とフェンの耕地化に対して、今日の農産物過剰時代の中で異なる保存・保全方法が採用される歴史的経緯を分析することにある。そのためには、灌水式採草地とフェンの耕地化が、農業生産物過剰という観点から見てそれぞれいかなる位置づけになるのかを確定し、その上で地域固有の歴史的景観・遺跡として、あるいは環境保全地帯として何故に異なる保存・保全方法が採用されるに至ったのかを分析する必要がある。従ってイギリス農業革命時代に遡って、それぞれの形成過程を確定すること、19世紀末以降の農業生産におけるそれぞれの意義およびそれに対する認識の変遷を辿ること、そして現在の取り組み実態について具体的に解明することが要請される。 平成26年度の研究では、ウォータ・メドウズに関する現地調査や資史料の収集を進め、その基本的な課題点を探り、その結果、研究実績の概要に述べたように、ウォータ・メドウズに関する基礎的な理解に資する論稿を執筆した。さらに、その歴史的起源とその役割の変遷、そして農業革命におけるウォータ・メドウズの果たした意義について執筆中である。その論稿では、早期農業革命論では非常に高く評価されてきたウォータ・メドウズではあるが、イギリス農業革命全体の中では、なぜ主流とはなりえなかったのか、を明らかにする。 また、ウォータ・メドウズの衰退に関しても調査を進行させており、初年度の研究作業としては、概ね順調に推移している、と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究は、おおむね順調に進行してはいるが、ウォータ・メドウズに関する論文を執筆している段階であることを踏まえ、当初の予定を若干変更することにした。当初の予定では、平成27年度は、フェンにおける耕地化とその現状復元のプロジェクトについて集中的に研究を進める、としていたが、ウォータ・メドウズに係わる調査の補充と論文執筆と並行しながら、フェンにおける耕地化について調査を実施することにする。 ウォータ・メドウズについては、その衰退とその保全については、これまでわが国では注目されることのなかったテーマである。本研究では、その保全活動の意義などについて充分に理解してもらうべく、イギリス農業が変化していく経過の中で、ウォータ・メドウズの存在意義が農業生産の上でどのような位置づけに変わっていくのか、その一方で歴史的景観としての意味づけがいかに形成されていくのかを解明する必要がある。こうした問題について今年度は補充すべき調査課題が残っているので、それらの調査を実施しながら論文執筆を進める。
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Causes of Carryover |
予定していたよりも図書購入について慎重に進めている中で、2月から3月にかけて大学図書館の措置によって図書購入が停止されたので、若干の残額が出た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度の残額は大きくなく、新年度に入ってから図書購入を開始した結果、平成27年度中に当初の予定通りに使用される見通しである。
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Research Products
(1 results)