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2015 Fiscal Year Research-status Report

低所得者への食料支援におけるアメリカ農務省の役割に関する社会経済史研究

Research Project

Project/Area Number 26380418
Research InstitutionUniversity of Tsukuba

Principal Investigator

佐藤 千登勢  筑波大学, 人文社会系, 教授 (70309863)

Project Period (FY) 2014-04-01 – 2018-03-31
Keywords社会保障 / 社会福祉 / 食糧支援
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、アメリカ合衆国(以下、アメリカ)における社会保障・社会福祉制度の発展において、経済的な困窮者に対する食糧支援がどのように行われてきたのかという問題を社会経済史的に考察することを目的としている。今年度は、1960年代に本格的に導入されたフードスタンプ制度の確立と拡充について、主として1970年代末までの時代に焦点を当てながら研究を進めた。
まず、1960年代に民主党のジョンソン政権の下で進められた「貧困との戦い」の中でフードスタンプが拡大されたことの歴史的な意義を考察した。1964年に制定されたフードスタンプ法の制定過程を詳細に検討することに、かなり多くの時間を割いた。連邦議会の議事録や報告書などを基本的な資料として、フードスタンプをめぐる政策決定にどのような人々が関与していたのかを考察した。その際、連邦議会の議員や農務省の官僚の発言や行動に加えて、貧困者のための社会福祉プログラムの拡充を提唱していた民間団体や市民運動の組織の役割にも目を向けた。
フードスタンプは、連邦政府が管轄する社会福祉プログラムとして、1960年代後半から1970年代末までにアメリカ社会に定着した。今年度の研究では、連邦政府の財政状況が悪化していく中で、受給資格や給付額がどのように拡充されていったのかを明らかにしようと試みた。元来、社会福祉プログラムの拡大には否定的であった共和党が政権を運営する時代になっても、フードスタンプが拡大を続けたのはなぜかという問題に取り組む必要があると考えたためである。さまざまな資料をもとに調査を進めた結果、この時期には、フードスタンプの「福祉」としての機能だけに着目するのではなく「栄養補助」という役割を新たに付与することで、超党派でフードスタンプ制度が拡充されていったことがわかった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

今年度は主に連邦議会の資料を中心に調査を進めたため、その他の資料にあたる時間が限られてしまった。特にこの研究で考察の対象としている農務省の役割について、今後一次史料をさらに収集し、考察を深めていく必要があると思われる。
また、1960年代後半から1970年代末は、アメリカの経済状況が次第に悪化していく時期にあたり、財政赤字が拡大する中で、フードスタンプが拡充を続けていくことができた理由について、もう少し視野を広げて検討しなければならない。なかでも、連邦政府の財政政策の中で農務省が管轄するプログラムがどのように捉えられていたのかを解明し、政策全体を視野に入れながら考察しなければならないと考えている。
ニクソン政権の福祉政策に対する見方はかなり複雑で矛盾に満ちた点が多々ある。民主党のジョンソン政権期に比べて、格段に社会福祉への関心が薄れていた時代であった。そうした歴史的な状況を考慮しながら、この時期のフードスタンプ制度の拡大をいかに評価するかが今後の課題のひとつである。
さらに、他の社会福祉プログラム、なかでも低所得の母子家庭を主な受給対象としたAFDCや低所得の高齢者や障害者を対象にしたSSIなど、直接「現金」を給付するプログラムと、食糧という「現物」の購入に特化したフードスタンプが相互に補完しながら、拡充を続けていった経緯についても、今後詳しく見ていく必要がある。
これらを踏まえると、当初の予定より若干、研究の進行が遅れている面もあるが、全体としてはおおむね順調に研究が進展していると見ることができる。

Strategy for Future Research Activity

今後は1980年代から1990年代に時代を移し、いわゆる「福祉改革」の中で経済的な困窮者に対する食糧支援であるフードスタンプがどのように位置づけられていったのかを考察する。福祉改革については、これまで書籍や論文としていくつか出版したものがあるが、それらでは主にAFDCなどの「現金」の給付が削減されていく過程を論じたので、次年度はフードスタンプ制度に対する改革に焦点を当てる形で研究を進めていく予定である。特にフードスタンプ制度の新たな方向性について、シンクタンクなどが行っている実証的な経済分析を参照するとともに、1990年代以降、導入が検討されている受給者の職業訓練や就労支援についても見ていきたい。
また、低所得者への食糧支援という領域に栄養学の知識が動員されたのもこの時期であるため、そうした新しい視点からも研究を進めていきたい。価格が安く、不健康な食料品を多くとっているため、フードスタンプの受給者の間で肥満や成人病が蔓延し、社会問題となっている。こうした問題に対し、新たな対策が必要であることが行政によって1990年代以降、認識されるようになった。フードスタンプの受給者に対し、実際どのような栄養指導が行われているのか、特に州レベルでの対策や取り組みに着目していきたい。また行政だけではなく、関連する民間団体が行っている活動にも目を向け、多角的に分析していきたい。
今年度はこうしたテーマを明らかにした上で、この研究をまとめ、論文を執筆していく予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2015

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results)

  • [Journal Article] "Mixed-Status Families" in the Age of Welfare Reform2015

    • Author(s)
      Chitose SATO
    • Journal Title

      Japanese Journal of American Studies

      Volume: 26 Pages: 145-167

    • Peer Reviewed / Open Access

URL: 

Published: 2017-01-06  

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