2015 Fiscal Year Research-status Report
戦後フランスにおける産業構造の転換とヨーロッパ統合の進展
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26380423
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
石山 幸彦 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 教授 (90251735)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エネルギー政策 / 石炭産業 / ヨーロッパ統合 / 国有化 / ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度における研究では、フランス解放(1944年)からヨーロッパ石炭鉄鋼共同体結成(1952年)にいたるまでのフランス石炭産業の再建とフランスを含むヨーロッパ諸国の石炭調達状況を踏まえて、結成後の同共同体による石炭共同市場の開設と石炭の流通管理、フランス政府や加盟国のエネルギー政策、フランス石炭産業の動向などを1950年代末まで調査・分析した。 まず、共同体結成にいたるまでのフランスの石炭調達と共同体の結成については、「戦後フランスにおける石炭調達の実態とシューマン・プラン――ヨーロッパの石炭市場とヨーロッパ石炭鉄鋼共同体の創設」『エコノミア』第66巻第1号(2015年5月)に発表した。 さらに、共同体結成後の1952年から1953年には、戦後に懸念されてきた石炭不足が解消されつつあり、1954年には、鉄道をはじめ様々な産業でエネルギー源が石炭から石油に転換していることを明らかにした。だが、その一方で、アメリカ政府は東西冷戦下にあって西ヨーロッパ諸国が東ヨーロッパからの石炭輸入を停止することと、斜陽化したアメリカ石炭産業の販路を確保することをめざして、助成金を供与する見返りに自国産石炭の輸出枠を設定する交渉を西ヨーロッパ諸国と開始した。西ヨーロッパ諸国はそれを受入れたため、その後のヨーロッパでは石炭が過剰にさえなっていた。 その一方で、共同体は自由競争を原則とする石炭共同市場に加盟諸国の石炭販売カルテルが存在することを問題視し、各国の政府や石炭業界との交渉に着手した。西ドイツのGEORG、フランスのATICなどのカルテル組織の活動制限や解体をめぐって交渉は展開されたが、石炭が過剰状況になっていたことを背景に、1950年代末までに具体的な成果は出せなかったことを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、平成26年度に実施できなかった第2次近代化設備計画(1954年~1957年)におけるフランス石炭産業の発展について分析した。次いで、平成27年度に予定していたヨーロッパ石炭鉄鋼共同体結成後のフランスの石炭調達状況について明らかにした。だが、フランスにおける第3次から第5次設備近代化計画における石炭産業につては検証できていない。ただし、平成28年度に予定している共同体結成後の石炭共同市場の状況については、1950年代末まで計画に先だって解明している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に先送りにした第3次から第5次近代化設備計画におけるフランス石炭産業の発展について分析し、同産業の発展については平成28年度に予定されているオイルショック(1970年代)の時期まで分析を継続する。さらには、平成28年度に予定しているヨーロッパ共同体の石炭共同市場の状況を1960年代末まで明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、史料調査のための旅費や図書資料の購入のために支出したが、小額の剰余が出たため、平成28年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度も図書資料の購入に補助金を支出する。研究の過程で必要とあれば、史料調査のための旅費にも支出する。
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Research Products
(2 results)