2014 Fiscal Year Research-status Report
現代イギリス労働市場における国外出身労働者への継続的な依存と移民第二世代の成長
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26380433
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
奥田 伸子 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (00192675)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / イギリス / 労働市場政策 / エスニック・マイノリティ / 移民 / 外国人労働者 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は、イギリス労働市場の外国人労働者とマイノリティ若年労働者の相互関係が特に顕著に現われている外食産業について分析し、その成果を9月の消費文化研究会主催のコンファレンス「移動(変化) 消費文化における人・もの・実践(Moving Around:People, Things and Practices in Consumer Culture)」において報告し、加筆修正して論文にした。 報告・論文では、第2次世界大戦以降から現在まで外食産業が外国人労働者に継続的に依存してきたことを第1次資料を使ってあきらかにした。1960年代以降、国内において若年者、特にエスニック・マイノリティの若者の失業が問題視された。政府は失業対策のために自国出身の若年者の雇用を訴え、移民を制限し、若年者のための職業訓練を行ったが有効な手段とはなりえなかった。外食産業の経営者は様々な経路を介して外国人労働力の導入を政府に働きかけた。 外食産業において経営者が雇用を試みた外国人労働者は時代および飲食店の性質によって異なる。特に1950年代以降、エスニック・レストランは新英連邦からの移民の玄関であり業界団体と政府との間には移民規制をめぐって駆け引きが展開された。 現在でも高級レストランからカフェテリア、エスニック・レストランなど外食産業の多くの部門が外国人労働力に依存している。エスニック・レストランのオーナーも自身の子供であるマイノリティ第2世代を労働力として利用することはせず国外からの導入を試みている。産業に特有の低賃金、不規則な労働時間といった労働問題を解決せず、安易に外国人労働者に頼る構造があることを指摘した。 今後、同様の構造を持つ他の産業、特に保健・介護関連産業について具体的に分析することによって、戦後イギリス労働市場の一つの特徴である「外国人労働者依存体質」について分析を深める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度は、これまでの9月にコンファレンスにおいて報告(英語)を行い、論文にまとめることができた(27年4月発行)。これについては当初の計画通りである。この論文において本研究の課題であるマイノリティ第2世代と外国人労働者の相互関係の具体例を一例明らかにしたと考える。 また、マイノリティ第2世代の数量分析に関しては、26年度は成果を公表することはできなかったものの、研究準備は進んでいる。これについては27年待つまでには成果を公表することを予定している。 以上から、「おおむね順調」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は数量分析を中心に行い、年度末までに成果を公表することを目標とする。おおむね本年11月ごろまでに分析そのものを終了し、12-1月に報告を行い、その後、論文を投稿する、というスケジュールで進める。 それに加え、本年度は国外における資料収集と、最終年度に予定している公開研究会の準備を行う。具体的には、28年2,3月の適切な時期にイギリスにおいて資料収集を行うとともに、本研究計画の最終年度に予定しているイギリス人研究者と面会して、招聘および公開研究会に関するの打ち合わせを行う。資料収集は、1970年代および1980年代前半における、看護師をはじめとする保健分野、および介護分野において、イギリス生まれ労働者と国外生まれ労働者双方のリクルート・訓練政策と(国外からの)導入政策を中心に行う予定である。 当初の研究計画では、このイギリス出張は27年夏に計画をしていたが、校務との関係で、28年2,3月のほうが妥当であると判断した。出張時期の変更に伴って、論文の執筆計画を前倒しすることとした。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、当初利用を予定していた英文論文のネイティヴ・チェックの予算(当初、8万円を計上)を使用せず、27年度以降の研究に利用することとしたためである。ネイティヴチェックを行わなかった理由は、発表論文が報告を基にしていたために報告準備も含めると論文執筆に十分な時間をとり、英文チェックを行うことができたと判断したことによる。それとともに本研究において予算が必要である、研究代表者自身の国外出張、さらには27年度以降に予定している国外研究者の招聘をめぐる環境変化(為替変動)を考慮した。残り1万円強は消耗品費等の差額による。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額とあわせた本年度の助成額は、およそ74万円となる。本年度は、国外出張におおよそ50万円を予定している。出張計画によってこれよりも削減できた時には、次年度以降の国外旅費に利用したいと考えている。また国内における資料収集、および研究発表のための予算として約15万円を国内旅費として予定している。図書費および消耗品費として9万円を予定している。
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