2014 Fiscal Year Research-status Report
第一次世界大戦下の英国のロジスティクス:GKN社と軍需省を中心に
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26380446
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
菅 一城 同志社大学, 経済学部, 教授 (70276400)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 第一次世界大戦 / イギリス / 製鉄業 / 軍需省 |
Outline of Annual Research Achievements |
イギリスで史料を収集し、解読・分析をすすめたうえで、研究成果を菅一城「GKNと軍需省――第一次世界大戦下の英国の軍需統制――」『経済学論叢』(同志社大学)第67巻第1号(2015年6月)にまとめた。 この論考は、GKNの受領書簡綴りのなかから、第一次世界大戦の際に英国に設置された軍需統制官庁である軍需省からの書簡に焦点をあわせて、政府と企業の関係史の視点から英国の軍需統制の実態を解明するものである。とくに本稿では、軍需省が生産現場の実態に関する情報を収集する体制が構築される過程、それに基づいて鉄鋼生産を統制する体制が構築される過程の2点にあわせて、軍需省自らが鉄鋼を購入する顧客として振る舞い、あるいは鉄鋼を購入する軍需工場のための代理商として振る舞う過程の3点から分析をすすめた。 この論考の意義は、上記の3点に即して、大きく3つに分けられる。第1に、これまで等閑視されていた情報収集体制の構築過程を明らかにし、地方部局ではなく、本省主導の中央集権的なものであったことを明らかにした。他方で、第2に、鉄鋼生産への統制が労働力や原材料の統制に比べて遅く、生産目標を明示することもなく、鉄鋼の増産が個々の企業の努力に委ねられていたことを明らかにした。第3に、軍需省の鉄鋼部門が戦前の製鉄業や鉄鋼商などによって構成され、戦時の鉄鋼需給の不均衡が平時の取引仲介のノウハウを駆使することによって調整されたことを明らかにした。 英国の近代史の叙述はしばしば第一次世界大戦の前後で断絶するが、本稿は、第一次世界大戦前と戦時体制の連続性を強調することで新たな視覚を提示した。これがこの論考のもつ重要性である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究成果をまとめたことで、初年度に予定していた研究の目的はほぼ達成できた。 上記の研究成果の公表は、予定していたよりも若干遅れたものであったが、翌年度分の研究対象の基礎調査を初年度にある程度すすめることができたことによって、その遅れを埋め合わせる側面もあるので、全体としてはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度については、バーミンガムの鉄鋼商W・C・M・ジェイムズ商会とGKN社の取引関係に焦点をあわせて研究をすすめる。上記の研究概要では、戦前の鉄鋼取引と戦時下の軍需省の業務の連続性を指摘したが、軍需省が戦時下に誕生した組織であって、戦前の平時には存在していなかった点に、この議論の限界がある。そこで上記のジェイムズ商会の事例を通じて戦前と戦時中の鉄鋼取引を連続的に考察する点に、この推進方策の重要性がある。
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Research Products
(1 results)