2016 Fiscal Year Research-status Report
第一次世界大戦下の英国のロジスティクス:GKN社と軍需省を中心に
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26380446
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
菅 一城 同志社大学, 経済学部, 教授 (70276400)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イギリス / ウェールズ / 企業間関係 / 製鉄業 / 鉄鋼商 / 郊外 / 住宅 / 投資 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果の内容:本年度は2つの研究成果を得た。第1に、第一次世界大戦下のイギリスの鉄鋼流通について、南ウェールズを拠点とするGKNとバーミンガムを拠点にミッドランド地方で取引仲介をおこなった鉄鋼商W・C・M・ジェイムズの関係の事例から検討した。第2に、地主貴族の所領経営史料をもとに、19世紀後半の南ウェールズの中心都市カーディフの郊外化の過程を分析した。とくに、港湾都市カーディフとともに発展した工業地区と港湾地区において、地主から借地して賃貸住宅地開発をおこなった家主層の地理的・社会的分布の違いを明らかにした。 研究成果の意義:第1の研究成果では、GKNとジェイムズの関係を中心に、南ウェールズの製鉄業とミッドランド地方の機械工業との関係を明らかにした。また、第2の研究成果では、とくに南ウェールズの港湾都市開発に、南ウェールズを越えた広い範囲から資金が流入していたことを明らかにした。後者については(1)小口の住宅投資が、投資家にとって事業の進捗を監視しやすい生活圏の範囲で行われるという先行研究の指摘に対して、住宅投資の多様性を示し、さらに一般的に(2)金融機関をつうじた植民地投資が注目される19世紀後半のイギリスにおいて、金融機関を経ない小口の投資の実態を示し、(3)いわゆる「ジェントルマン資本主義」論以降強調される、没落して金融資本と結びつくという地主貴族像に対して、所領の都市開発の機会を活用して工業化社会に順応する地主の活動を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は製鉄会社GKNを中心に関連する官庁、企業などとの関係から鉄鋼流通の実態を明らかにすることを期待し、実際に、本年度も鉄鋼商との関係については成果を得た。しかし、当初に予定していた鉄道会社あるいは車両貸出し業者については、多数の史料を確認・解読することはできたが、その内容は形式的なものにすぎず、すでに得られていた研究成果と比較可能なかたちで分析をすすめることはできなかった。 このように史料の内容が当初に予期していたものと異なっていたので、当初に予定していた史料調査の海外渡航において、可能な限り当初の研究課題と関係のある別の史料を渉猟・解読するかたちで第2の研究成果を得た。当初の予定とは異なる方向に進むことになったが、上記のように、南ウェールズにおける工業ネットワークの一端を明らかにすることができたことは、順調な研究の進展と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策については、ウィンザー男爵家の所領経営史料が、当初の研究計画の対象時期よりも長い期間について保存されており、20世紀半ばまでを扱うことができる。すでに1880年から1910年までの30年分については史料の閲覧を済ませており、ひきつづき第一次世界大戦期以降についても史料の解読・分析、論文の執筆をすすめる予定である。 上記のように、すでに研究計画に変更を加えているので、これ以上の変更を重ねることは避けるべきであると考えられ、また、新たに利用している史料が長期にわたって同じ形式で記録されている帳簿類を中心としているので研究計画の変更を強いられる可能性は低いと考えられる。 ただし、新たな史料に即したかたちで研究史を見直す必要があり、先行研究の収集・整理について既存のデータベースなどを活用しながら、取り組みたいと考える。
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Research Products
(2 results)