2015 Fiscal Year Research-status Report
環境経営における組織特性の影響メカニズムに関する実証研究
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26380465
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
木全 晃 香川大学, 地域マネジメント研究科, 教授 (10448350)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板倉 宏昭 香川大学, 地域マネジメント研究科, 教授 (80335835)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 環境保護文化 / ポーター仮説 / 組織ケイパビリティ / 環境パフォーマンス / 経済パフォーマンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,持続可能な経済発展をめざす国際的コンセンサスにより,環境保護活動を経営目的に組み込んだ「環境経営」が強く求められていることを受け,環境と経済の両立について考察することを目的としている.その際,本研究は環境と経済を両立する組織とそうでない組織には,組織内の戦略次元および文化次元等に差異がみられるという仮説のもと,定量的方法(民間企業への質問紙票調査)および定性的方法(言説分析等)により,環境経営のメカニズムを明らかにするものである.これら組織特性の差異と,経済面での成果と環境面での成果の因果関係を考察するのが本研究の最終目的である. 平成27年度は,最終目標を達成するための本格的な展開段階として,主に5つの課題に取り組むことを事前に計画しており,これらは,①質問紙票(アンケート)の確定,②質問紙票調査の実施,③SPSS Statisticsを利用した回収データの解析,④言説分析を用いた調査・考察,⑤国内外での成果発表,であった.計画に照らし合わせるならば,平成27年度までにすべての項目で概ね遂行することができた.ちなみに,①および②については前年度の実施状況報告書に記載したとおり,別途,我々が獲得した学内助成金を充当して実施した四国域内の建設業およびサービス業への調査票送付,回収によるものであることを申し添えておく.地方創成を踏まえるなら,当初,立案した全国レヴェルの調査・考察よりも,地域特性を浮き彫りにし,環境と経済の両立に影響を及ぼす組織メカニズムを把握する方向性はより意義深いと判断した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事前に計画した5つの事項について,概ね順調に進展していると評価してよいものと考えられる.その理由は,平成27年度に計画した,①質問紙票(アンケート)の確定,②質問紙票調査の実施,③SPSS Statisticsを利用した回収データの解析,④言説分析を用いた調査・考察,⑤国内外での成果発表のうち,①および②については前述のとおり当初計画から方向性の修正を行ったものの,万遍なく完了することができたためである.その詳細を以下に記す. 第一に,我々が四国4県の建設業およびサービス業への質問紙票調査から得た回収したパネルデータ(有効回答数:建設業198社,サービス業498社)を用い,SPSS Statisticsを利用して統計解析を行った.環境面での成果および経済面での成果をそれぞれ従属変数とする多変量解析等を行った結果,文化次元が環境と経済の両立に寄与していることなどが明らかとなった. 第二に,言説分析を用いた調査・考察については,エネルギー需要の低減による二酸化炭素排出量の発生抑制にネットワーク組織(テレワーク等)形態の採用が一定の効果をもたらすという平成26年度の調査からの知見を踏まえ,民間企業に行った調査結果を,主にEUの研究者が集まる学会で発表することができたほか,上場企業のリサイクル事業に焦点を当てて環境と経済の両立要因を調査・考察した成果をオーストラリアの言説分析研究者が集まる国際会議で発表した. 第三に,査読付論文の投稿は主に平成28年度に予定していたが,上記の統計解析結果の一部を用い,経営工学系の学会を統括する学術雑誌に我々の分析結果を投稿し,査読付論文が受理された.このように,平成27年度に我々は合計で,3編の論文,3件の成果発表(国内1回,海外2回)を公表することができた.このことは,本研究の進捗状況として充分に評価してよいものと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の本研究最終年度は,主に3つの研究成果としてのアウトプットを予定している. 第一に,我々が回収したパネルデータを用い,さらに高度な統計解析手法により分析・考察を深めながら,定量的な研究成果を国内外の学会で発表するとともに,論文として公表することである. 第二に,環境経営の構成要素には従来,温暖化対策,廃棄物リサイクル,化学物質管理が3本柱として挙げられてきたが,本研究の当初の計画書でも示したとおり,近年,生物多様性保護が注視されつつあることから,これまで本研究では手つかずとなっていた同分野に焦点を当てながら環境と経済の両立に関する研究発表を行うことを予定している.これについては,平成28年度にスウェーデンで行われる国際会議(SCOS)で行う.同時に,これまで実施してきたインタビューや二次データの言説分析などの成果は,書籍として公表することも計画中である. 第三に,先の定量的な研究成果を踏まえ,回答企業等を対象とした事後インタビューを実施,推進する計画である.その成果についても随時,国内外で発表する.調査データの統計的解析のみでも充分に有効な成果は得られるが,解析結果から得た発見事実をもとに企業にフィードバック・インタビューを行うことで,さらに精緻かつ実態に即した考察が可能となるからである.インタビュー対象者は調査回答企業の経営者を予定している.これにより,さらに掘り下げた考察を行うことができるものと思われる.
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Causes of Carryover |
予定していた書籍が絶版であることが判明し,購入することができなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
別途,類似書籍を改めて発注する予定である.
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Research Products
(6 results)