2014 Fiscal Year Research-status Report
地域成長戦略のためのあたらしい生産ネットワーク構造のデザイン
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26380470
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
川上 敬 北海道科学大学, 工学部, 教授 (10234022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯川 恵子 神奈川大学, 経営学部, 准教授 (20420763)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生産ネットワーク / 地域の生き残り戦略 / 生産文化論 / 付加価値創出 / 地理的へだたり |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ものづくり企業が地方・地域に立地しながらグローバルな生産環境の中で,製品の付加価値創出の意味で地理的距離のへだたりを超越できるような,あたらしい生産ネットワーク構造のデザインを文理融合型の研究手法により提案することである。その研究結果から,地方企業が大都市圏に立地するのと同じかそれ以上の強みを発揮できる生産ネットワーク構造を提示し,地域の生き残りへと導くことを目的としている。すなわち,地理的には遠距離に分散する生産拠点群をネットワークとして結合し,各拠点が有する多様な経営資源を組み合わせ,連携させることで,距離空間の隔たりを凌駕するような付加価値を創出可能とするあたらしい生産ネットワーク構造をデザインするための理論を構築したい。 その目的にしたがい,グループ化や合併などにより「地理的へだたりを付加価値へと転換する次世代型生産ネットワーク構造」をすでに実現している国内企業の先進事例分析をベースに、あまりうまくいかなかった失敗事例を調査分析することによって,先行研究で明らかにしてきた成否を決める要因や駆動因子の関係性をより精緻なものとした。 具体的にはすでに調査を進めていた㈱菊水や江別製粉㈱,グローバルに生産展開している工作機械メーカのDMG森精機,ヤマザキマザック㈱等について,特に想定した結果が得られなかった失敗事例に関してさらなる調査・分析を行った。その結果から,実際には選択されなかった候補地域の属性とそれを生産ネットワークに組込んだ場合に想定される設備・物流を明らかにした。 また,先行研究で開発した,最適化理論に基いた生産ネットワーク構造シミュレータには,グラフ理論をさらに適用することによって生産ネットワークを数理的に取り扱うことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では地域産業活性化の効果を生むために,地域にある企業が地域に密着しながら地理的空間内に分散された生産拠点や連携企業などと生産ネットワーク構造を形成し,その多様な経営資源を連携融合することで高い付加価値を創出する生産構造を,実践的かつ理論的に明らかにしようとすることが目的である。 その目的に向かって今年度は先進的企業に対するさらなる調査・分析,特に失敗事例を調査することができ,それらをまとめている. またすでに構築済みの生産ネットワークシミュレータには,グラフ理論を用いて離散数学的なエッセンスを加え,さらに新しい知見を得る段階まで来ている.このことからも研究はおおむね順調に進んでいると考えている. 加えて,26年度内にそれらの結果を英文論文として一編投稿することができた点も進展具合を表しているものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの研究成果を受けて,地理的へだたりがあっても付加価値を生む要因と予想される多種多様な経営資源についての詳細なマップを構築する予定である。従来,経営資源とは「ヒト,モノ,カネ」と称され曖昧な形のまま扱われるが,単に「ヒト」といっても従業員数から算出される労働力のような定量的なものから,従業員の技術力やモチベーションといった定性的なものまで考慮されるべきである。この多様な経営資源を生産文化論の考え方を導入し,定性的な資源についても最小要素にまで分解しリストアップし,各経営資源要素間の依存関係や相互作用関係を整理し全体を経営資源ネットワークとしてのマップとして表現する。経営資源マップの作成によって,資源がどこに存在するか,資源と資源の関係性が一目で把握できるようになるので,企業の戦略的な意思決定に応用することが期待できる。 さらにこの経営資源マップとのシステム統合を行いたい。これにはグラフ理論をベースにした数理情報学的な手法を用いて統合システムの理論構築を図る。それによって具体的な企業例や製品例に対しても自動的に地理的へだたりから付加価値を生む新しい生産ネットワーク構造をデザインすることが可能となる。これまで明らかにしてきた生産ネットワークの理論的成長過程理解はものづくり成長戦略の戦略論といえるが,本研究の進展によって戦術論としての有効性も示していきたい。すなわち「成長した生産ネットワーク」の有利な出力、つまり製品を同定し、グラフの頂点に属性を持たせて、それらの属性から構成される評価関数を製品ごとに設定出来るようにする。
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Causes of Carryover |
当初予定の予算計画に対して,\323,381が次年度使用額となっているが,これは数理情報学的アプローチにおける「生産ネットワーク構造デザインシステム構築用ワークステーション」を未導入としたことによる。この理由としては26年度中においては,グラフ理論を用いた離散数学的要素を加えてきたが,実際にシステム上にインテグレートする段階にいたらなかったためである。しかしこれは研究の進展遅れではなく,理論構築を完全にした後に,システムに実装したほうがより効率的であるとの判断からである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記理由にあげたように,次年度は理論構築を完了する予定であるため,その後に「生産ネットワーク構造デザインシステム構築用ワークステーション」を導入し,システムを実装することとする。
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Research Products
(1 results)