2016 Fiscal Year Annual Research Report
On the influence on corporate value by the labor circumstances of the employees
Project/Area Number |
26380479
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
萩原 統宏 明治大学, 商学部, 専任教授 (40314348)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 洋史 明治大学, 商学部, 専任教授 (00239980)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 経営戦略 / 人事戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は、民間企業の従業員の労働環境・労働条件が、企業価値、収益性に及ぼす影響について明らかにすることである。この影響を明らかにすることは、わが国の証券投資における新たな流れであるESG(Enviroment, Social responsibility, Governance)投資のパフォーマンス向上に貢献する可能性を持つなど、新たな長期的な株式投資戦略の提示が期待される。また、「ブラック企業」と呼ばれる企業群の存在が指摘され、労働環境・条件と企業のパフォーマンスとの関連性に対する社会的な関心の高まりとともに、当局による企業の労働環境に対する監督・規制強化の必要性、規制のあり方に関する議論が活発化しつつある昨今、本研究は、この議論に貢献する研究事例の蓄積と有益な提言を試みてきた。その結果、業種ごとに、定量的な結果は異なるものの、適度な賃金格差、ジェンダーダイバーシティの度合いの下で、企業の会計的利益率によって測られるパフォーマンスについて、好ましい影響をもたらすことが確認できた。ただし、株式の超過収益率という観点からは、有意な成果は、限られた業種においてしか確認できなかった。このことは、賃金も含めた従業員の労働環境・条件に対する投資が、実際には企業の利益に対しては貢献の可能性があるものの、金融市場においては、「投資」としては、有益なものとしては評価されておらず、むしろ「費用」としてしか評価されていないことが、示唆された。有益な投資として金融市場において評価されるための、具体的な労働環境・労働条件に関する施策については、これからの研究課題としたい。研究成果としての論文については、海外の学会における報告・議論を通じて、将来、学会誌上において公表すべく作業中である。
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