2015 Fiscal Year Research-status Report
熟練を要する専門的人材育成を組織横断的に行うための制度設計に関する研究
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26380482
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
湯川 恵子 神奈川大学, 経営学部, 准教授 (20420763)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 熟練技能 / ゆるやかな標準化 / 生産文化 / グローバル化 / Industry4.0 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は我が国のものづくり現場における人材育成の組織横断的な制度設計を「ゆるやかな標準化」の視点から分析を行った.ものづくり産業の熟練技能の作業プロセスの可視化による教育システム標準化の可能性を明らかにしてきた実績のなかで,産業界を取り巻く経営環境に目を転じてみると,「第四次産業革命」とも呼ぶべき大変革が研究当初の予測をはるかに超える速度で進みつつある.特筆すべきは,ドイツの取り組みで,ものづくり部門においてグローバルリーダーの立場を構築するために,政府,企業,組合,研究機関などがAll Germanyで世界標準構築を旗印に取り組むIndustry 4.0の動きは世界中に衝撃を与えている.我が国製造業においてもグローバル化の一層の進展によって高付加価値型生産体制の一層の伸長がますます避けては通れない課題となってきており,その優秀性を担保する人材育成においても待ったなしの状態に突入している. しかしこの問題は,一企業がクローズ体質や自前主義で個別に対応していては乗りこえられるものでないことも明らかにされた.こうした困難に直面する中で,本研究では「ある範囲のなかで,それぞれの事情に合わせて独自に変更することが許される標準」としての「ゆるやかな標準化」の構築に活路をみいだすべく,「生産文化」の視点から解決策を模索しているところである.グローバル戦略における標準化のなかでも,わが国固有の「生産文化」の違いが模倣困難な競争優位性を生み出すとして「ゆるやかな標準化」の可能性を本年度の成果として明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画当初は,個別企業のケースから帰納的に制度設計を検討する予定であった.しかしこれまでの研究から,マーケットがグローバルに展開し,競争相手の多くが海外のグローバル企業となってきていることに鑑み,生産プロセスのみならず人材育成においても問題意識の共有,および外部との連携強化は必要不可欠の課題となってきた.しかし企業横断的に作業の標準化や部品の共通化が必要とされながら,日本のモノづくり産業ではこうした取り組みはほとんど進んでいないことが分かってきた.さらにドイツのIndustry4.0などの新しい動きは主に技術的側面からの世界標準化のアプローチが多いこともわかってきた. しかし人材育成や技能伝承に関する標準化については未着手の領域であり,人材育成のゆるやかな標準化は本研究の独自性を発揮できる領域であることが明らかになってきた.ゆえに当初計画では,熟練技能の特殊性の高い他分野への研究拡大を想定しており,ものづくり産業の域を超えていない点ではやや遅れているとも捉えられるが,本研究テーマの本質に鑑みれば経営環境の変化を取り込んで分析が進められているという意味では研究はおおむね順調に進展したと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
「ゆるやかな標準化」にさらに焦点を当て,企業を超えた同期的人材育成システム構築がわが国のものづくり産業の優秀性を担保することを明らかにしていきたい.この分析は,最終的には日本の「ものづくり力」に対する悲観を排し,他国が模倣できない領域の担保としての生産文化を強調し,この「生産文化の国際比較」によってわが国製造業の熟練技能の優位性を提案していく予定である.このプロセスの中で,他分野他業界の事例研究が人材育成制度設計における加速要因になるか否かもできる限り情報収集していきたい.
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Causes of Carryover |
概ね本年度の予算は計画的に執行された.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究の最終年度として分析をさらに深化させるとともに,成果発表に力を入れていく予定である.ゆえに成果発表を中心に適宜,研究費を有効に使用していきたい.
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Research Products
(6 results)