2016 Fiscal Year Research-status Report
熟練を要する専門的人材育成を組織横断的に行うための制度設計に関する研究
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26380482
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
湯川 恵子 神奈川大学, 経営学部, 准教授 (20420763)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 人材育成 / 熟練技能 / ゆるやかな標準化 / 生産文化 / グローバル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,前年度のキーワードとして抽出されたものづくり現場における人材育成の「ゆるやかな標準化」を「ある範囲のなかで,それぞれの事情に合わせて独自に変更することが許される標準」として,「生産文化」の視点から実証的に解明を試みたものである.わが国固有の「生産文化」の違いがグローバル化の中で模倣困難な競争優位性を生み出すとの考えから,どういった固有性を抽出すれば熟練技能人材育成の制度設計に資するものになるのかに焦点を当てて分析を行った.そこで本年度は,①どういった熟練技能要素が標準化できるのか,そして②組織横断的人材育成の要として大学から企業への橋渡し期の教育の着目点,の二点を解明した. まず,わが国の熟練技能を際立たせるために,近年,マーケットとしてもまた技能実習生受け入れ実績としても注目度の高いベトナムとの国際比較を試みた.在ベトナムの日系企業へのインタビュー調査の結果,国民性の違いによる考え方,文化や風土,メンタリティなどの要素で,わが国の競争優位性を担保しうる標準化要素が見えてきた.次に,企業間での人材育成システム構築の困難性に鑑み,組織横断的人材育成の要として大学から企業への橋渡し期における教育に着目し,人材育成のいちアプローチとなるか否かを検討した. 結果,熟練技能人材育成におけるグローバル競争優位性を加味した標準化要素としての「生産文化」および人材育成アプローチとしての大学から企業への橋渡し期の教育の重点として学習者の主体性に着目した手法の導入がカギとなることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定では,熟練を要する専門的人材育成を組織横断的に行うことができるのか,できるのであればどのように,という視点で,グローバル時代の技能人材育成の緩やかな標準化を明らかにする予定であった.専門性の高いものづくり現場では企業同士の壁が高いので,標準化には大変な困難性があることが分析を進める中で次第に明らかになってきたため,大学から企業への橋渡し期の教育に視点を変更して分析を進めた結果,間接的ではあるが教わる側(学習者)のコミットメントを引き出す人材育成手法の有効性が見えてきた点で,本研究自体のブレイクスルーとなったといえる. さらにドイツのIndustry4.0に代表されるような世界の動きが加速するなかで,個別工場や企業の競争優位性を超えたゆるやかな人材育成標準がオールジャパンで構築されることがカギとなることが待ったなしの環境下にある現在,わが国のものづくり産業の教育制度の標準化へのアプローチが喫緊の課題であるために,国際比較から生産文化を意識した標準化要素の抽出を行った点も一定の成果を上げることができたと考えている. しかしながら,ものづくり産業以外への汎用性のある人材育成制度構築に向けたガイドラインの提示という点では研究の遅延が見られるものの,産業を取り巻く環境変化とものづくり人材育成課題への学究的貢献の緊急度と必要性を考慮すると,引き続き現在の方向性で研究を進めていくことが望ましいと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本来であれば2016年度で研究終了であった課題であるが,結果的に2017年度にも研究者の都合で継続することが許されたために,この機会を有効に活用し企業を超えた同期的人材育成のための枠組みを,「ゆるやかな標準化」と「橋渡し期の教育」に焦点を当て,わが国のものづくり産業に集中してその優秀性を明らかにしていきたい.この中で,ものづくり分野の現場の声を多く収集していけるように努力していきたい.
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Causes of Carryover |
研究者の育児休業による
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究の追加年度ととらえて分析をさらに深め,成果発表に力を入れていく予定である.ゆえに成果発表を中心に適宜,研究費を使用していきたい.
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Research Products
(2 results)