2015 Fiscal Year Research-status Report
M&A実施企業における内部成長要因の変化 -企業成長に向けた取組みの解明-
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26380483
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
篠崎 香織 実践女子大学, 人間社会学部, 准教授 (50362017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 晃也 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50303342)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 成長戦略 / M&A / 研究開発 / 製品アーキテクチャ / ポジショニング |
Outline of Annual Research Achievements |
M&A実施後の研究開発活動に関わる変化を捉える目的で、技術獲得あるいは研究開発強化を理由にM&Aを実施した企業の中から、水平型のM&Aを実施した企業を取り上げ、インタビュー調査および二次データの分析を行った。 分析対象は、当該企業の医療用モニター事業である。医療用モニター市場は用途ごとに分化しており、今回対象としたM&Aは水平型のケースであるが、被買収企業の主力製品は医療現場の川上(治療が必要な部分を撮影する装置、例えば、CT,MRI,マンモグラフィー等に付随)で使用されるモニターで、買収企業の主力製品は、CTやMRIなどの撮影装置で撮影された映像を表示して診断用として使用されるものであった。その他、医療用モニターには、診察室用、電子カルテ用、手術室やカンファレンス室等で使用される比較的大型のもの等がある。今回のケースは水平型のM&Aであったが、主力製品が異なるためライバル企業の減少という効果はなかった。シェアについては、M&Aを実施したことによる増加を凌ぐ需要が新興国等の医療現場を中心に相対的に低価格帯のモニター市場で発生したため、むしろシェアを落とす結果となった。 M&A実施前後の研究開発活動の変化は、アウトプットを追うだけでは捉えにくく、有価証券報告書に記述されている研究開発活動の内容を、M&A実施前からその後までの新しい技術や製品に関する情報を整理した。そしてその内容を踏まえて、企業へのインタビュー調査を実施した。その結果、M&A実施企業および被M&A実施企業の主力商品分野に加え、複数の撮影装置で撮影した画像を一覧可能にした手術室用のモニターや、手術室整備のソリューション事業も手掛けるようになっていることがわかった。M&Aを経て当該企業は、「診断」から「治療」まで守備範囲を拡大しており、また新たなビジネスに取り組んでいて、シナジー効果が出ていることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画段階では質問票調査を予定していたが、状況を細かく把握するためにインタビュー調査に切り替えた。インタビュー調査の実施はインタビュー先の都合の影響を受けるため、日程が容易に決められず、結果、研究の進捗がやや遅れることととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
分析対象事例が決まったので、今後は特許データの解析を通して、M&A実施後にM&A実施企業および被M&A実施企業の技術者が共同する形で研究開発を実施し、成果を出すところまで達しているかを明らかにする。 また、今年度の研究成果を製品アーキテクチャの観点から捉えなおし、M&A実施前後でポジショニングがどのように変化しているのかを明らかにし、M&Aが競争優位につながっているのかを検討する。
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Causes of Carryover |
今年度に質問票調査の実施を予定していたが、それをインタビュー調査に切り替えたため使用予定の予算が次年度に繰り越しになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した予算を使用して、今年度は調査対象にしている企業の特許出願データの分析を行う。それによって、M&A実施企業と被M&A実施企業の技術者が共同しているかどうかを明らかにする。 また、最終年度のため報告書の作成に一部費用を充てる。
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Research Products
(1 results)