2014 Fiscal Year Research-status Report
医療情報システムの活用に必要な組織能力:院内・院外の情報共有と業務成果の関係性
Project/Area Number |
26380488
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
久保 亮一 京都産業大学, 経営学部, 准教授 (80339754)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 病院経営 / 経営学 / 医療情報システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「医療情報システムを用いて高いコスト効率の達成や地域連携を効果的に行うにあたって、どのような組織能力が影響を与えているのか」を定性的・定量的に検討することを目的としている。研究対象は、京都府の地域中核病院を多数擁する武田病院グループを設定している。 以下の点に留意しながら研究を進めたい。1点目は、現在判明していない他の効果を定性的調査を続けながら見出す必要性があることである。院内情報システムを用いる組織的な能力には、多種の院内情報システムをうまく結合させるコード上の工夫が重要なこと、業務内容や手順をパッケージソフトに合わせること、院内メンバーの意識の向上、導入・活用に関する上層部の後押しなどの要因が判明している。2点目は、成果指標の対象を患者、医師、看護師などの院内だけでなく、地域内の診療所まで拡張して考察しなければならない。3点目は、医療情報システムの構成に起因する問題である。医療情報システムは、土台にあたるメインシステム(オーダリング・電子カルテ・会計情報システム)の上に複数の部門システム(SPDや画像診断システムなど)が連結され構成される。よって、1つの成果指標を検討する際には、どのシステムによる効果なのかを明確にする必要がある。 これらの点に関して、「インタビュー調査や現場の観察調査」と「企業における情報システムの既存研究の検討」を並行させつつ、コンテクストに適合した複数の成果変数を探索し確定する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画は、病院現場とベンダーに対する聞き取り調査・観察調査を中心に行った。インタビュイーとなる対象者は武田病院グループ3病院に属する本部情報システム部員(メディカルSE)、医師、看護師、検査技師、薬剤師、事務スタッフ、理事長である。インタビュー形式は、構造的な形式で聞く部分と非構造的な形式で自由に聞く部分を切り分けて行った。 これらの聞き取り調査と並行して、経営学・医療情報システムに関する文献調査を行い、聞き取った内容に該当する概念やモデルを探索した。情報システム分野の研究で頻繁に引用されるDelone and McLean (1992 ; 2002)によると、顧客側からみた情報システムの効果は、①情報システムの品質、②情報システムがもたらす情報の品質、③組織内における情報システムの使用頻度、④ユーザーの満足度、⑤(個人における)効果や影響、⑥(組織における)ROIや生産性という6つのレベルで測定可能だとされ、定量的分析には Delone and McLeanモデルを活用しようと考えている。ルーティンを含んだ組織能力における変数作成が次年度の課題である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度7月中旬から27年度11月末にかけて、特定化した効果および要因をベースにして操作化を行い、平成27年度12月の質問票調査で用いる質問事項を作成する。さらに、本部情報システム部員からのチェックやパイロット調査を行いながら、質問票を改良していく予定である。回答者は、院内メンバーとして、医師、看護師、事務スタッフ、患者、院外として、地域診療所を想定しているが、調査協力の度合いについては今後交渉する必要がある。平成27年12月に3病院に属するメンバーに対して郵送質問票調査を実行する。 また、これらの質問票作成と並行して、経営学・医療情報システムに関する文献調査を継続的に行い、概念やモデルを検討していく。
|
Causes of Carryover |
2014年度に他の地域における病院の聞き取り調査を行う予定であったが、京都地域での聞き取りに注力したため、実行することができなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度には、関東地区を中心にして他の病院における情報システムに関する聞き取り調査・病院見学を実施する。その際には、現在調査中の病院と状況・規模・組織特性などを比較しながら、現在判明している要因がその病院独自のものでないかをチェックしたい。
|
Research Products
(2 results)