2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380495
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
槇谷 正人 摂南大学, 経営学部, 教授 (80511097)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 組織変革 / ダイナミック・ケイパビリティ / 組織ルーティン / M&A(合併・買収) / 事業撤退 / 組織形態 / 組織学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的は、組織変革における阻害・促進要因を、戦略の実行プロセスに着目して実証的に解明することである。最初に、本研究の分析フレームワークを提示するため、組織変革に関わる理論的系譜を最近の文献を収集し調査した。平成27年度投稿論文で提示した分析フレームワークをもとに、事例企業(東レ、花王、パナソニック、シャープ、ダイキン工業、キヤノン、ソニー)の組織変革を調査した。 研究方法は、最初に、組織変革の阻害・促進要因の間接的4要因として、組織変革の断行、組織形態の変化、意思決定の明確化、組織学習の促進を提示した。次に、事例企業を十数年間の文献調査、公表資料、新聞記事などから分析した。その作業を進めるにあたって、構築されたシステム・制度、活動として定着した組織ルーティンに的を絞って考察を進めた。そのうえで、組織変革の阻害・促進要因を、外部環境適応の戦略を中心にしたマクロ組織の視点と、組織と人間との関係を対象としたミクロ組織の視点の両面から、さらに、計画的変革と創発的変革の二面性の視点から検討した。平成26年度は、組織と人間との関係について、働く人の尊厳を、労働、仕事、活動の視点から考察し、経営哲学学会第31回全国大会の統一論題で報告した。本研究の意義は、組織変革の理論と実証の統合を図りそのメカニズムを解明することで、多くの企業や社会に認識され再現可能な理論として実践されることが期待できる。 次年度の計画であるが、第1段階の理論的整理と第2段階の事例企業の実証研究の接合作業を続け、分析フレームワークによる実証的解明を進める。これらの作業と分析の成果を、引き続き学会発表と投稿論文で報告する。組織変革の阻害要因を、階層と職能における機能不全に焦点を絞って考察を続ける。一方、組織変革の促進要因は、組織能力、組織学習、組織関係、組織文化との関係から考察を続ける。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、文献収集に重点を置き、事例企業の1次文献の実証研究に重点を置いた。理論研究の文献調査は、組織変革、グローバル経営、組織ルーティン、ダイナミック・ケイパビリティを中心に行った。持続的成長企業として、東レ、花王、ダイキン工業、キヤノンを取り上げで、組織変革の阻害・促進要因を考察すると同時に、組織変革が求められる日本の電機産業のなかから、パナソニック、ソニー、シャープを比較研究した。 事例企業の考察のため、理論研究を体系的に把握したうえで分析フレームワークを提示した。これらの成果は投稿論文として平成27年に掲載される予定である。理論研究の主テーマは、組織ルーティンとダイナミック・ケイパビリティである。そこで明らかになってきた内容と実証的解明に向けた研究成果は、所属学会の研究会で報告に向けて準備を進めている。 さらに、日本企業の代表的経営者の経営哲学について考察する研究は、上記の事例企業7社であり、今後事例企業を加えて検討を進める。また、当初1980年以降の経営管理制度の設計と運用の実態を調査する予定であったが、近年の組織変革を掘り下げて検討する必要性から2000年以降の十数年へと変更した。理論研究の文献調査で、計画的変革を創発的変革によって推進する有効性が確認できたため、組織形態の変化と組織学習の促進に焦点を絞って組織変革のメカニズムを調査した。しかし、公表資料や記事などから把握できる史実は限られているため、今後新たな研究方法の検討が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
理論研究と実証的解明から、次の課題について考察を深める。組織変革の阻害要因との関係から、階層と職能における機能不全、企業倫理と内部統制の自己統治、多様化する組織メンバーの働きがい等が課題テーマである。一方、組織変革の促進要因との関係から、M&A後の企業間マネジメント、経営者の意思決定と組織形態の変化、経営戦略と経営理念の連動による組織学習の促進等である。 調査を精緻化するためには事例企業の質的調査が考えられるが、経営者層へのインタビュー、職場での参与観察には制約があり、計画通り進展が困難な場合が少なくない。そこで、初年度に提示した分析フレームワークをベースに、理論的体系の再整理と実証研究の接合作業を文献調査と公表資料・データから再検証する。とくに、事例研究においては、企業活動の十数年の公表資料・データから詳細に分析し、組織変革の阻害・促進要因の実証的解明を深める。また、事例企業の選定基準と選定数の合理的な基準を明確にする必要があり、これらの課題に対する取り組みと内容については、雑誌論文と学会発表によって報告する。 以上の推進方策の成果を、学会や研究会における報告により、国内外の研究者からのフィードバックとその吸収を行う。また、既に掲載された論文や学会報告の内容を、印刷物やWeb上で積極的に報告の機会を開発して研究者からの批判を仰ぐ。また、本研究で得られた内容について、広く経営実務家に向けてセミナーなどで報告する。合わせて学内での関連する授業科目とリンクさせて報告する。
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Causes of Carryover |
旅費直接経費予算250000円に対して、213480円であった。学会参加1回分見込んでいたが、その予算分は平成27年度に使用する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
所属学会(組織学会、日本経営学会、経営戦略学会、経営哲学学会、日本マネジメント学会、ホワイトヘッドプロセス学会)大会、研究会への参加による使用を予定している。
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Remarks |
組織変革の新たな領域を切り拓き、経営実務で再現可能な実践的メソッドを提示することが研究目的である。組織変革のメカニズム解明に向けて、第1に、企業の競争優位の組織能力を、経営戦略、経営組織、経営管理に至る連動プロセスとして考察する。第2に、グローバル戦略と経営組織の境界拡大を、組織関係能力の構築、組織メンバー間の相互作用、組織学習を促進する組織形態の変化について考察する。
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Research Products
(3 results)