2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380496
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Research Institution | The International University of Kagoshima |
Principal Investigator |
馬頭 忠治 鹿児島国際大学, 経済学部, 教授 (00165052)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 多様な支援の形 / 特例子会社 / 中小企業の支援策 / アートの社会的役割 / 中間的就労と自立 / 新ビジネス・スクール / 支援機関の協働 / 地域生活の支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、多様な形での就労支援の実態調査からテーマ「障がい者・社会的弱者の就労支援と企業の社会的責任」にアプローチした。具体的には、①障がい者の就労支援について、特定子会社の先進事例として、オムロン京都太陽株式会社および社団法人太陽の家(大分県別府市)を訪問し、就労の現場での取り組みの実情を把握した。②さらに大手の企業ばかりではなく、中小企業での取組みとして、京都中小企業同友会で障害者問題副委員長を務め、自らもレストラン思風都で障害者雇用を積極的に進めらている責任者から、中小企業における労働力確保と福祉施設(児童養護施設を含む)の関連から新しい取組みを調査した。③また、障がい者をアーティストとして社会が受け入れる可能性について、社会福祉法人素王会「アトリエインカーブ」から学んだ。④さらに不登校、ひきこもり、発達障害などを抱える若者の就労支援については、昨年度、韓国調査で訪問したK2の日本における活動を調査した。相談業務以外に、共同宿舎や農業、さらには雇用創出の場として「にこまる食堂」「ころんばす」、子ども支援の「ぽにょ」で就労する場を提供し、自立のプロセスを地域に創出していくという方法の有効性を学んた。⑤障がい者のためのビジネススクールで、就労移行支援事業体でもあるフェスティーナーレ・ビジネススクールを調査した。障がい者と企業の雇用をつなげる第三の機関としてビジネススクールをもっと広げていくことの有効性を学んだ。⑥大学が積極的に障がい者を学生として受け入れ、健常者の学生と共同生活をするなどの取り組みから、支援のノウハウを修得していこうとする韓国のナザレ大学と神戸大学の協同研究会に参加し、大学の新しい役割を学んだ。さらに、最も注目する社会的企業による就労支援については、生活そのものを地域で支援する韓国とイタリアの現地調査から学ぶことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
調査を通じて、障がい者・社会的弱者の就労支援を企業の社会的責任として、企業だけが引き受けて事足りという事態ではなく、障がい者などの生活実態は深刻であり、社会が全体として引き受けることが支援の前提条件となっていることが明確になってきた。今後、この社会システム的な取組みに配慮しながら、障がい者や社会的弱者がソーシャル・インクルージョンされる社会的支援について考察することで、このテーマに総合的にアプローチするという新しい視点から研究、調査を進めていく。 とりわけ、イタリアのバザーニア法の制定が教えるように、精神障がい者を収監する精神病院を廃止し、障がい者が、地域で家族とともに生活できるように精神保健センターによる医療支援、社会的企業、社会的協同組合による雇用支援や住宅支援、家族の協力などが一体的に取り組む社会システムがあって、はじめて障がい者は自らの障がいと向かい合い、健全で安心のある暮しを模索するということに未来の姿を感じるようになっている。注目していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今度は、新しい社会システムを展望しうるエンパワーメントとしての「リカバリー」や当事者研究、さらにはファーレ・アッシエーメ(みんなでやろう)運動からアプローチしてまとめていきたい。 そうした研究から企業の社会的存在性を担保する社会制度や社会サービスについて新たに考察することで、企業が自らの社会的責任を果たしやすい社会環境を整えていくことの現実的および理論的妥当性を論証することで、新しい研究の視点と方法を提起できればと考えている。 そのためにも、当事者研究で知られる「ベてるの家」(北海道浦河)やファーレ・アッシエーメ運動のメッカであるイタリアのトレントなど世界的な取組みについて調査し、まとめていきたい。また、こうした世界的な潮流を知るためにカナダで開催される「Gsef2016モントリオール大会」に参加する。
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Causes of Carryover |
平成27年度末(3月7日から12日)に実施したイタリア調査(トリエステ、パドヴァ)の手続きが、機関締切の3月末日までに処理できず、旅費の一部が繰り越しされたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このイタリア調査費を計上すれば、若干の支出超過となるが、翌年度の使用額と合わせれば、ほぼ計画通りに執行できたこととなり、したがって、使用計画において特別の変更はない。
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