2015 Fiscal Year Research-status Report
太陽電池産業における国際的なビジネス生態系の発達プロセスの研究
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26380507
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松本 陽一 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (00510249)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富田 純一 東洋大学, 経営学部, 准教授 (30396824)
辻本 将晴 東京工業大学, その他の研究科, 准教授 (60376499)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 経営学 / 技術経営 / イノベーション / 太陽電池 / ビジネス生態系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、太陽電池産業におけるビジネスの生態系がどのようにして国境間をまたいで成立してきたのか、その詳細を明らかにすることを目的としている。そのために大別2つの研究課題に取り組む。第1がビジネス生態系に関する文献レビューである。そして第2が、インタビュー調査を中心とした定性的事例研究である。第2の調査については内外で太陽電池について書かれた雑誌や新聞記事や企業が公開している情報の精査を行い、補完的な資料として用いる。 第1の課題について、本年度は昨年度から引き続き、ビジネス生態系に関連するキーワードで抽出した論文群について、その分野や特徴をまとめ、国際学会において報告した。また、ビジネス生態系というキーワードに限らない類似の視点として、「ビジネスモデル」や「アーキテクチャ」、「プラットフォーム」といったキーワードに着目し、新たに文献調査を実施した。その成果は次年度にとりまとめる。この調査によって産業のあり方や事業からの収益獲得の方法を分析する複数の視点の位置関係を把握できるので、産業と事業のより深い理解をえる手助けになると思われる。 第2の課題について、本年度は国内市場を中心として太陽光発電の専門雑誌や各種企業情報データベースを活用して、おもに2000年代以降のこの分野への企業の参入と撤退を可能な限り網羅的に収集・情報整理をおこなった。これに既存のインタビュー調査と次年度のインタビュー調査を加えて、ビジネス生態系の発展プロセスに関する分析を実施する予定である。太陽電池が関わる産業は2000年以降さまざまな環境の変化に直面して変容しており、第1の文献調査の成果を念頭に置きながら、このダイナミックなプロセスのより深い理解につながる分析視角を探索的かつ慎重に検討している。この成果をまとめることで、産業の変容を把握する有用な視点の提示および太陽電池産業の理解が得られると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は文献レビューが順調に進み、ビジネス生態系というキーワードだけでなく、近接する概念についての検討も進めることができた。最終的には事例分析と併せて、より深い理解を図っていく予定であるが、その下地を整えることができた。一方で、定性的事例研究については、当初予定していた海外での調査を実施しなかった。これは海外メーカーおよび海外の太陽電池関連市場の動向が安定的に推移しているために、新たなインタビュー調査の必要性が相対的に低下していると判断したためである。その代わりに公開情報の徹底的な収集と整理を行い、2次資料をもちいた調査が大きく進んだ。全体としては、予定していた進捗をやや上回る達成度である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は本研究プロジェクトの最終年度にあたるため、これまでに蓄積してきた成果のとりまとめに向けた調査を急ぎ、成果物の公刊を進めたい。まず、文献レビューについては、ビジネス生態系に関する文献に加えて、その近接領域であるビジネスモデルやビジネスアーキテクチャ、プラットフォームといった考え方との比較検討を行い、概念の整理を図る。第2に、事例研究については、これまで行ってきた国内外のインタビュー調査と資料調査を踏まえて、国内のインタビュー調査を実施する。海外現地調査については必要性をできる限り早い時期に判断する。もしも既にある情報と文献等で十分な知見を得られていると判断した場合には、海外調査は行わない。これらの調査と文献レビューの成果を併せて、太陽電池に関わるビジネス生態系の発展プロセスについての論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が2万円弱生じた。海外調査の代わりに網羅的な資料収集を行ったことが、予定の金額と使用金額との差を生んだ理由であると考えられる。ただし、その差は本年度所要額約190万円に対して約1%程度にとどまっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、予定した文献レビューおよびインタビュー調査を実施し、成果物のとりまとめを進める。わずかながら生じた次年度使用金はその中で効率的に利用させていただきたい。
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