2015 Fiscal Year Research-status Report
働きがいの規定要因としてのソーシャル・キャピタルと人材マネジメント
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26380514
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
西村 孝史 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 准教授 (40508462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西岡 由美 立正大学, 経営学部, 准教授 (30369467)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ソーシャル・キャピタル / 戦略的人的資源管理 / 柔軟性 / 高業績ワークシステム / 人的資本 / 人事機能 / 知覚された組織的支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は,これまでの研究を整理し,学会発表を3本実施した。うち2本は,人事機能の柔軟性に関する発表(日本労務学会。以下,発表1。経営行動科学学会,以下,発表2)であり,もう1本は,ソーシャル・キャピタルと近接概念であるPOS(知覚された組織的支援)との関係性を3時点で収集したデータを用いて検討した発表である(組織学会。以下,発表3)。いずれも本研究課題である働きがいとソーシャル・キャピタルの間に存在する調整・媒介変数を検討した発表である。 人事機能の権限を扱った発表1では,配置機能の分権化が組織全体にとって不利益を引き起こす可能性があることが明らかにした。また,人的資本の柔軟性を高めると組織全体の不利益を抑制すると同時に配置の分権化が部分媒介していることを明らかにした。他方,処遇の分権化は,MBOと結びつくことで人的資本の柔軟性を高めることも明らかになったことから,人事機能の分権化に組み合わせが存在することを示した。 発表2では,戦略的人的資源管理で議論されている高業績ワークシステムと柔軟性という2つの概念の関係について,日本企業の上場企業121社を対象とした質問紙調査を用いて検討した。分析の結果,高業績ワークシステムと柔軟性が同時に実施された場合,柔軟性がソーシャル・キャピタルに与える直接効果がなくなり,高業績ワークシステムを媒介してソーシャル・キャピタルに影響を与えるという完全媒介が確認された。 発表3では,301名のデータに交差遅延効果モデルを用いて両者の関係性を検討したところ,POSがSCの原因となる傾向を確認することができた。また,共分散構造分析の結果,POSの職場業績への直接的な影響は見られず,POSの効果はSCを媒介することで職場業績に間接的に影響を及ぼしていることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題である働きがいとソーシャル・キャピタルの間に存在する調整・媒介変数を検討した発表を3本実施したことで,働きがいとソーシャル・キャピタルの関係性を立体的に捉えるための材料を整えることができたため。 また,3時点のパネルデータを整備できたことで今後,このデータを用いた研究論文を作成することが予想されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度である2016年度では,以下2つを実施する。第1に,これまでの研究成果をまとめて論文・著作にすることである。第2に,働きがいとソーシャル・キャピタルの間に存在する調整・媒介変数の1つとして社員区分に注目をしたインターネット調査を実施する。多様な正社員の議論がなされている中で社員区分の違いがソーシャル・キャピタル形成に差異をもたらし,結果として働きがいに影響を与えることが予想されるからである。
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Causes of Carryover |
2015年度に調査を実施予定であったが,学会発表でのコメントを通じて調査デザインを再考する必要が出てきたため,調査年度を次年度に繰り越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定通り,企業で働く個人を対象としたインターネット調査を実施予定である。
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