2015 Fiscal Year Research-status Report
我が国中小企業の競争力向上を目的とした知的財産活用支援システムの開発
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26380542
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
後藤 時政 愛知工業大学, 経営学部, 教授 (20329626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 昌寛 愛知県立大学, 情報科学部, 教授 (60242905)
羽田 裕 福山市立大学, 都市教養学部, 准教授 (80546268)
雪田 和人 愛知工業大学, 工学部, 教授 (60298461)
北川 一敬 愛知工業大学, 工学部, 教授 (50278230)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 技術経営 / 知財戦略 / 中業企業支援 / 競争力向上 / 知財活用支援システム |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究の目的の一つは中小企業が特許活用によって付加価値創造の最大化を実現する理論構築である。本年度の研究では,この付加価値創造最大化を可能足らしめる知財活動を整合性のとれた活動と定義し,得られた結果からこの整合性が具体的にどのようなものかを考察した。その結果は次の①~③の結果を得られた。 ① この価値創造最大化の実現については,まず,特許出願時,経営者もしくは管理者自身が特許明細書について広い権利範囲を取得することができる記載テクニックを有していればよいが,十分な力量がないのであれば,信頼できる弁理士に明細書の作成を依頼すべきである。 ② 個々の企業に対するミクロ解析の結果では,弁理士による出願と自社出願を併用している企業や,併用している企業でも弁理士を利用している期間の自社作成の明細書のページ数は多くなる傾向があった。このことは,弁理士に出願を依頼することは,弁理士が作成する明細書ばかりでなく,自社で作成する明細書の品質向上にも効果があること示唆していた。このように弁理士を利用する場合は,自社の特許活動の質的向上にも大いに寄与させるべきである。 ③ 審査請求の時期については,ミクロ解析を行ったいずれの企業も,ほとんどすべての出願に対して3年の審査機関終了直前に審査請求する傾向があった。付加価値創造を最大化する理想的な知財活動との整合性について考えれば,本来審査請求の時期は発明の内容によって異なっており,経営戦略や事業戦略と密接に関連させ,タイムリーにすべきである。 このように,特許出願などの知財活動において中小製造企業が付加価値創造を最大化するためにどのようなことに留意すべきかを顕在化した。①および②については弁理士が支援し,③については大学や金融機関などが支援する,といった支援方法が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の最終的な目標は,知的財産中小企業が知財戦略および知財活用に対して高い意識の高揚を触発し,自社の経営戦略の一角に知財戦略を構え,知財活用によって利益が得られるような強い企業になることを支援する仕組みを提案し,実際に運用してその仕組みを評価することである。 27年度には,26年度に予定されていた活動である,企業に対してヒアリング調査を行い,中小企業が知財を活用することによって自社の付加価値創造の最大化を実現するための理論構築を行っていくとともに,「中小企業が知財活用によって利益を得られるような強い企業になることを支援する仕組み」(知財活用支援センター)の基本設計を行うといった研究成果を踏まえ,当該センターを,ホームページやチラシによって宣伝し,実際に運用していく予定であった。 この予定は,27年度および28年度の2年間での予定であるため,致命的な遅れではないが,1年目(26年度)の予定としていた,理論構築や仕組みづくりに思った以上に苦戦していし,ホームページはいまだ設計中ということで,このような評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに,「中小企業が知財活用によって利益を得られるような強い企業になることを支援する仕組み」(知財活用支援センター)を設計するために,この仕組みに組み込むことを考えている金融機関については,大垣共立銀行および十六銀行,産学連携機関については中部TLOおよび京都大学産官学連携本部についてヒアリング調査を行った。このような調査は今後も範囲を広げて実施し,より多くの情報を得る予定である。 本年度については,研究実績の概要で述べたミクロ解析で取り扱った企業についてヒアリング調査を行い,知財活動が付加価値創造の最大化に結び付かない原因を調査する。ただ,この原因は,上述したように,特許出願の解析からある程度予測できているので,この裏付けと他に見落としている点が無いかの確認を行う。これにより,中小企業に対して最も効果的で,かつ効率的な支援は何かを考察する。 また,共同研究者の羽田先生(福山市立大学)が研究のツールとして使用している,「場」の理論を適用し,現在,マーケティング論を軸に,地域金融機関のコーディネイト機能を分析・体系化し,地域金融機関を中心とした中小企業の知的財産を育成していくモデルを検討している。 このように中小企業(支援される側),産学連携機関および金融機関(支援する側)の状況調査を綿密に行い,知財活用支援センターの実現を目指す。
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Causes of Carryover |
【現在までの進捗状況】で述べたように,「中小企業が知財活用によって利益を得られるような強い企業になることを支援する仕組み」(知財活用支援センター)の設計が遅れており,次年度使用額が生じた大きな原因は,これを公に紹介するためのホームページの外注費が今年度使用されなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度については,知財活用支援センターの設計が不完全であっても,これをホームページで公開しながら,各方面からの意見またはヒアリング調査によって,より効果的な機能を果たせられるような仕組みにもっていきたいと思っている。なお,現在ホームページの設計については進行中であり,まもなく外部業者に発注できるものと思われる。
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Research Products
(1 results)