2015 Fiscal Year Research-status Report
消費者のブランド無選好を形成する要因とその結果に関する実証研究
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26380570
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
坂下 玄哲 慶應義塾大学, 経営管理研究科, 准教授 (00384157)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 消費者行動 / ブランド・マネジメント / マーケティング・コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、消費者が特定製品カテゴリーに存在する異なる複数のブランドに対する選好をいずれも形成しない「ブランド無選好」という状況に注目し、それがいかなる要因によってもたらされ、かつ、結果としてどのような効果を生むかについて、特に消費者の認知構造という視点から理論的、かつ実証的に検討を加えることを目的としている。ブランド無選好という、理論的にも実務的にも重要な問題に消費者視点から接近することにより、①理論的には、特にブランド研究におけるブランド知識やブランド・パリティー(ブランド間類似性)、ブランド・コミットメントなどの主要な諸概念の精緻化を促し、②実務的には、効果的なブランド構築のためのマーケティング戦略策定のための具体的な指針を提供することを試みる。 初年度における研究活動から得た様々なフィードバックを受け、二年目も引き続き研究枠組の精緻化に努めた。具体的には、以下の四つの研究活動を行った。はじめに、初年度に抽出されたキー概念、およびその関連概念について、広範で詳細な文献レビューを行った。特に注目したBrand Parity(異なるブランド間における知覚された類似性)をもたらす先行要因、および結果要因について、探索される情報のタイプのみならず、探索主体となる消費者の特徴も考慮し、より幅広い研究枠組の構築に努めた。第二に、収集されたクリックストリームデータ、およびサーベイ調査によって収集されたデータを多面的に分析することによって、BPを取り巻く要因の絞り込みを行った。これにより、BPを形成する情報探索の結果、製品カテゴリ一般に関する情報の取得が、逆に競合他社への選好を高めてしまう可能性を発見した。第三に、国外の関連分野の専門家から引き続き積極的に研究助言を享受し、分析の妥当性を高める試みがなされた。第四に、主に欧米の国際学会での報告を通じて、さまざまなフィードバックを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年度は、初年度に引き続き(1)文献調査、(2)インタビュー調査、(3)商業集積における経験調査や観察調査を追加的に実施し、本研究のキーとなる概念の抽出とその理論的位置づけを明確にする予定であった。 上記(1)については予定通り研究活動を行った。キー概念だけでなくその周辺概念も対象としてレビューした関係から、当初想定していた以上の文献や資料を幅広く深くあたった。(2)についてはやはりインタビュー調査への協力を得ることができず、なかなか思うように進めることができなかった。そのため、追加的に別の分析を行った。具体的には、サーベイ調査によって収集された新しいデータも分析対象とし、キー概念であるBPの結果要因にも焦点を当てた検討を加えた。また、関連分野の専門家からの助言や、各種学会からのフィードバックを精力的に取り入れ、既に収集されたデータの分析を何度もやり直した。(3)については適宜行ったものの、研究活動の焦点はどちらかと言うと先述の分析にあったため、こちらについては確認程度に行った。 以上のように、当初の予定とは異なるアプローチによる研究活動を代替的に行っているものの、研究目的の遂行自体は進んでいると認識しているため、二年度の研究活動は「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
クリックストリームデータ、およびサーベイデータの追加的分析により新たな知見を得たことにより、本研究の枠組は若干変化してきている。しかしながら、本研究課題の遂行という大枠からは、その根幹にかかわるほどの大きな変更であるとは言えない。むしろ、これらの変更点により、研究枠組はさらに精緻化していると認識している。 今後は、これらの新しい知見も踏まえつつ、当初の研究課題を進展させることを念頭に置いた研究活動を行ってゆく所存である。具体的には、二年度に引き続いて以下の研究活動を行う予定である。第一に、関連文献をさらにレビューすることによって、これまでの研究活動により得られた知見から追加された新たな概念も含めた研究枠組の更なる精緻化を試みる。第二に、抽出された枠組を経験的に検証するための準備活動を行う。新たな経験データの収集が望ましいのは言うまでもないが、それが難しい場合、これまで収集されたデータを新たな視座から理解するための分析枠組の構築を試みる。第三に、これらの研究活動を通じて、抽出された研究枠組を検証する。最後に、国内外の学会や学術雑誌などにおいて可能な限り発表し、さまざまな関連分野の専門家からフィードバックを得ることによって、研究枠組の改善、さらには、新しい方向への展開可能性について考察を深める予定である。
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Causes of Carryover |
インタビュー調査の中止から調査謝礼が不要となったこと、および物品購入・アルバイト雇用の必要性がなくなったことから、資金が残ることとなった。いっぽうで、学会報告および研究打合せのための海外出張が複数回に及んだ結果、最終的には若干の資金を翌年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越しはあったものの相対的に少ない金額であったため、引き続き、研究活動の全般的な推進、また、特に海外出張などの比較的大きな費用のかかる項目に充当する予定である。
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