2015 Fiscal Year Research-status Report
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26380578
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
小山 太郎 中部大学, 研究推進機構, 講師 (40440648)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | デザイン・マネジメント / 製品開発 / イタリア / デザイン理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
デザイン志向原理について、本年度は、デザイン理論に関するイタリア語の文献を多数入手することで、イタリアのデザイン理論を通史的に把握することができた。文献から言えることは、イタリアにおけるデザイン研究は、a)モノのかたち(フォルム)を定める、b)問題解決、c)エンジニアリングとしてのデザイン、d)設計されたモノがユーザーの様々な情緒を喚起しつつ、同時に象徴的な意味をも感じさせる、に大別されるということである。また、イタリアにおけるデザインの仕事は、プロダクトデザインと、小売店舗のインテリアデザインの二つに大きく分かれており、それらの仕事はミラノに集中しているということも分かった。後者のインテリアデザインの場合、イタリア人デザイナーは新たな店舗のインテリアのイメージ図を創出するに際して、言葉を介さずに画像イメージだけを編集加工(画像処理)して新店舗のイメージ図を出してくる傾向があり、これは、言葉で考えたコンセプトに合致するイメージ画像を、雑誌・カタログ・ネット・写真のアーカイブズ等から探してくる日本人デザイナーによるデザインの仕方と比べて、一層直観的(intuitive)であることも判明した。(フルッサーが述べるように)これが、言葉でもなく、数式でもなく、もっぱらイメージで考えるような第三番目に登場した思考パターン(=デザイン思考)であり、そこでは、使い古された言語記号を介さないという意味で「現象学還元」に類似した思考操作が為されていると言うことができる。つまり、言語が世界内の存在を分節する前の「イメージや音の流れ」に浸ることで新たなデザインイメージを捻出してくるわけだが、これは、生き生きとした現実を既存の言葉が反映していないからだ、という前提に立っているからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分かりにくいとされるイタリアのデザイン主導型の製品開発の仕方について、広範な文献を読み解くことで、通史的に把握することができた。イタリアのデザイン理論は、ドイツのウルム造形大学におけるデザイン研究に影響されつつも、独自の発達を遂げたのであり、その中心人物はジッロ・ドルフレーズ(Gillo Dorfles)、ジュリオ・カルロ・アルガン(Giulio Carlo Argan)、エンツォ・フライテイリ(Enzo Fraiteili)などである。1950~1960年代のイタリアのデザイン黄金期を飾るブルーノ・ムナーリ、エンツォ・マーリ、ヴィーコ・マジストレッティ、マリオ・ベッリーニ、マルコ・ザヌーゾ、アンドレア・ブランジィ、などのデザイナーは、これらのデザイン理論家達と対話しつつデザインの実践を進め、とりわけ大量生産・大量消費のアメリカ型の産業モデルへのアンチテーゼを意識して、デザイナーと職人との協業による高級品の制作とその結果としての「衰退した地方自治体(コミュニティ)の再生」を目論んだのであった。そういったコミュニティの再生には企業家側も協力したのであり、その理念モデル(代表例)がアドリアーノ・オリベッティ(Adriano Olivetti)である。イタリアにおける経営者のモデルは、フィアットとオリベッティがあり、デザイン主導で高級品を制作し、同時にコミュニティの再生も達成することを理論家したのはオリベッティである(「L'ordine politico delle comunita,Edizione di comunita」・「L'ideal de la Communaute,Edizioni di comunita」・「La fabbrica e la comunita,Movimento comunita」・「Il cammino delle comunita,Edizioni di comunita」・「Society, State, community,Edizioni di comunita」などが、この問題に関するオリベッティの著作である。)高級カシミアを手掛けるクチネッリも、オリベッティ・モデルに従って、ソロメオという街を復活させたのである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、a)プロダクトデザイン、b)インテリアデザイン、の二つに分けて進めていくが、前者については、デザイン主導型のプロダクトデザインについて、自動車・家電・照明・眼鏡・ヨット・自転車などの個別分野でそれぞれの理念型を提出したい。たとえば、自動車のデザインについてイタリア人のデザイン理論家達が言及している事項をまとめつつ、自動車に関する最近の研究書の翻訳プロジェクトも実施する。さらに、プロダクトデザインから、インテリアデザインへと繋いでいくため、ブランジィが行った色彩パターンに関する研究―「国民性を考慮して、どのような色彩を各商品に施せばよいのかを研究したマニュアル(モンテフィブレ・アクイジション・マニュアル)」―をベースにして、生活環境とインテリアデザインの手法についても研究を進めていく。また、イタリア式のデザイン・マネジメントの手法に関しても最後にまとめを行う。ムードボードや写真ボードを使った新たな商品・サービスイメージの捻出法、そして物語を作成して新たな生活様式を提案する、などといったデザインマネジメントの手法がイタリアには存在するが、日本ではまだ知られていないため、積極的に紹介したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、まず、予定していた高額の研究図書(モンテ・フィッブレ・アクイジション・マニュアル)の発注が間に合わなかった点があげられる。また、多数のイタリア語文献の読み込みに時間がかかり、現地調査に時間をかけれなかったことも次年度使用額が発生した要因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これらの金額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては、予定していた高額の研究図書を購入し、併せて仮説を検証するためのアンケート調査などを計画している。
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Research Products
(2 results)