2016 Fiscal Year Research-status Report
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26380587
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
西村 順二 甲南大学, 経営学部, 教授 (60198504)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 製造小売 / 流通 / 小売企業 / SPA / 産業集積 / 中小企業のマーケティング / 成長戦略 / 地域市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題である「我が国流通業の源泉としての製造小売業の実証研究」に従い、製造小売業、特に洋菓子産業に属する中小規模の製造小売業者に焦点を当て、その産業としての特性、製品の持つ固有の特性、そして地域における集積形成の固有性に基づき幾つかの考察を加えてきた。また、その歴史的経緯についても、神戸市のスイーツ産業に特化して、若干の制度的検討を加えてきた。さらには、これらの研究過程を通して、消費地に近接する集積と、消費地から遠隔に立地する産業集積についての比較考察を、他の地方都市に限定して行う視点を得た。 産業の集積という視点からみた場合に、製造業を中心とする神戸市と言う特定地域において、スイーツに関わる製造小売業が発展してきたのは、ゲートウエイ機能を担当する卸売業者や商社に単に依存するだけではなく、消費地に近接することによる最終消費に関する情報等の入手可能性が高いこと、そして後背地に大消費地を有していることから、スイーツ店と言う製造小売業の存在要件が整っていることが、神戸市における流通構造の形成の中で一定の役割を果たしてきたことは明らかであろう。食料品に代表される製品寿命が相対的に短い製品を扱う組織にとって、製造小売業はその形成・維持・成長に向けての一つの有力な流通業態であるということである。本来は経済成長に伴い社会的に製造と販売のそれぞれに特化し、その専門化による経済性や効率性を求めて製造と販売の分離が生じるが、この特化とは異なって、異質な二つの側面を常態として同時並行して実行している一つの経済主体が、着実に地域市場には存在し、長く維持されてきたのは、その成長戦略において、規模の拡大ではなく、存続維持・持続可能性を目指してきたことは、多数の中小小売業者の存在を裏付けるもう一つの明示的な成長戦略の存在があったということである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
製造小売業の題材として神戸市におけるスイーツ産業を事例対象として考察を加えてきた。消費地近接性視点では、消費者調査等に基づき、スイーツ・生洋菓子に対する消費者の嗜好には多様性があるが、ある種のカテゴリーに収斂することができること、そしてそれは素材に対するニーズ・嗜好と完成品に対するニーズ・嗜好に分けることができることが判明した。これは、加工による完成品の変更可能性や多様性があることが、製造小売業者の強みになるということである。また、製造機能を持つがゆえに品揃えにおける制約を受ける中でも、この製品の特徴により多様な品揃えを提供できる強みを持つことも判明した。これら消費者の諸特徴、消費者対応の諸特徴、そして作り手側の歴史的な地域特性などにより、神戸地域にスイーツ産業が形成され、一つの集積となってきたことが明確になった。 しかし、これらの分析を進めていく中で、消費地に近接する産業集積の優位性について、消費地から遠隔地に形成される製造小売業集積との対比考察の必要性が見出された。とはいえ、現実的には消費地から遠隔に形成される産業集積において製造小売業の集積の存在は、想定しにくいし、捕捉しにくいのが現実である。なぜならば、小売販売機能を併存して有する製造小売業者が集積するには、製造工程上の分業体制等の仕組みが必要である以外に、小売販売上の大きな市場の存在が必要となってくる。そしてそれは、近接地のものでなければ、小売販売工程上集積する必然性はないこととなる。あるいは、製造工程上の費用性から集積するならば、小売販売上全国市場を目指すこととならざるを得ない。従って、考察を進める上で、製造小売業に限定的に特化されず、製造機能面での集積の諸特徴分析に留まらざるを得なかった。そのため、消費地から遠隔地に立地する造小売業の産業集積についての検討を行う必要性から研究の遅滞が生じてしまったものである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究プロセスに従い製造小売業の考察を行う中で、産業集積として消費地近接タイプと消費地遠隔タイプについての検討が必要となってきた。しかしながら、現実的には後者のタイプは存在しにくい。そのデータ等の取得や事例の抽出は困難である。今後は、①神戸市地域というエリアにおいて、消費地に近接して製造小売業が集積することと、他の地域の消費地近接の製造小売業との比較検討によりこの点を明らかにする方法論と、②神戸市地域における他産業との比較においてこの製造小売業の消費近接性殻より大きな影響を受ける関係性を考察することが考えられる。日本における製造小売業の形成・成長が日本全体にいて特徴的な流通経路形成・流通構造形成をもたらしたことを明らかにしていくためには、この追加的な研究課題を解決する必要があり、第二の方法論で検討を加えていくことする。 その場合に、同一製造小売業間の比較検討もあり得るし、小売販売業と製造小売業との比較検討や、神戸市市域全体の流通変化との比較検討も考えられる。後者の研究対象に絞り込み、追加的研究課題には対処して、研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究を進めていく中で、製造小売業の産業集積に関して、消費地近接型と消費地遠隔型に関する追加的な調査課題が浮かび上がったため、追加的な研究課題が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査研究を進めていく上で、現実的には消費地遠隔型の製造小売業の産業集積の研究対象は特定化しにくい状況である。従って、入手可能な二次データを活用することにより、消費地近接型の製造小売業の産業集積と、そのエリアにおける他業種の製造小売業産業集積のデータを活用するか、あるいは当該エリアでの当該製造小売業の全体データや全国データとの相対比較により、流通業態全体の中での特異性を抽出することにより、追加的な課題に対する検証を試みる予定である。
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Research Products
(3 results)