2015 Fiscal Year Research-status Report
日本企業の会計行動・リスクテイク行動と会計数値特性に関する総合的研究
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26380600
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
中野 誠 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (00275017)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 条件付保守主義 / 無条件保守主義 / 投資行動 / リスクテイク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、低成長時代を迎えた日本経済の元、日本企業のリスクテイク行動・会計行動が、財務報告数値に及ぼす経済的影響を解明する点にある。具体的には、会計保守主義(条件付き保守主義及び無条件保守主義)がリスクテイク行動、株式リターン、株式リターン・ボラティリティに及ぼす影響を実証的に検証することを狙いとしている。 平成27年度の研究実績としては、海外への情報発信の一環として、日本銀行金融研究所の英文ワーキングペーパー("Effects of Accounting Conservatism on Corporate Investment Levels, Risk Taking, and Shareholder Value," Bank of Japan, Discussion Paper Series)を基にして、シドニー大学ビジネススクールでのセミナーにおいて研究報告を実施した。豪州の研究者だけでなく、イギリス、インドネシア、アメリカ、ニュージーランド、チリ、インドなど国際的な研究メンバーが集う学術的セミナーにおいて研究報告をすることができた。多くの貴重なコメント、アドバイスを頂くことができたのが大きな収穫であった。特に、無条件保守主義に関して、経営者の裁量の余地がいかほど残されているのかについて、活発な議論があった。各国のマクロの会計政策すなわち会計基準設定経由の影響、ならびに企業の属する産業経由の影響が大半ではないのか、という点については、さらなる検討が必要となろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の前半は海外出張が続き、物理的な作業時間を取ることが難しかった。その影響から、データ整備ならびに統計・分析作業が多少遅れ気味であった。しかしながら、平成26年度の進捗が計画以上だったこと、平成27年度後半の作業の好調な進捗などから、研究計画全体への影響が平準化され、特に問題は生じていない。 内容的には、会計保守主義の分析に加えて、企業のClassification shifting行動に関する研究成果を追加することができた。いわゆる「段階的会計利益の分類操作による利益管理」である。さらには、邦銀による貸倒引当金の保守性と利益評価に関する研究を公表することもできた。以上のことから、平成27年全体を評価するならば、「おおむね順調に進展している」と自己点検、自己評価をする。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年夏に開催予定の日本会計研究学会の全国大会において、統一論題報告の報告者の依頼を受けている。「財務報告におけるグローバルとローカル」という統一論題に、本研究の研究内容を適合させて、報告する予定である。そこでの研究成果も踏まえて、研究成果をまとめた研究書の公刊を計画している。実際に出版社(中央経済社)とも交渉をし、『マクロとミクロの実証会計』という題目で研究期間終了後、すみやかに公刊の予定である。その目的達成の基礎を形成するために、平成27年度中にはいくつかの単発論文を公表した。これらの論文を『マクロとミクロの実証会計』のいくつかのチャプターとして組み込むことで、書籍としての全体観を整える予定である。
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Research Products
(7 results)