2014 Fiscal Year Research-status Report
会計基準と会計実務のコンバージェンスおよびその相互作用に関する研究
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26380606
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
角ヶ谷 典幸 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80267921)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コンバージェンス / 日本の固有性 / 会計専門家の判断力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本ではなぜ会計基準のコンバージェンス(国際的統一)が慎重に進められているのかを客観的なデータや証言を用いて分析することにある。平成26年度は、「日本の固有性」に関する先行研究を収集・整理した上で、国際財務報告基準(IFRS)適用の是非を検討している企業会計審議会総会・企業調整部会合同会議の議事録を分析対象にしてコンテント・アナリシス(内容分析)を実施し、IFRS適用に関する企業会計審議会の各委員の多様な意見を検証した。 分析の結果、日本の会計環境は社会的、経済的、法的、文化的、組織的、専門的および歴史的ファクターによって形成されていることが明らかにされた。また、企業会計審議会の委員のうち、会計研究者、財務諸表作成者(製造業からの代表者等)は、日本公認会計士協会からの代表者、財務諸表利用者(アナリスト等)に比べて、IFRSの強制適用に反対する割合が高いこと、2011年6月30から2013年6月19日にかけての議論は、2008年10月23から2009年6月11日にかけての議論に比べて、IFRSの強制適用に反対する割合が高い傾向にあったこと、ステークホルダー・グループ(学識経験者等も含む)ごとに、また期間ごとに、用いられたロジック(想定している諸環境)が異なることが明らかにされた。 たとえば、IFRS強制適用反対派は「日本経済における製造業の重要性」や「日本の会計基準のIFRSに対する優位性」をはじめとしたローカルな視点を重視する傾向があるのに対し、IFRS強制適用賛成派は「海外市場での資金調達の可能性」や「財務報告の国際的な比較可能性」をはじめとしたグローバルな視点を重視する傾向があった。ただし、「魅力ある資本市場の構築」や「リサイクリング・純利益の重要性」については意見の差はなく、オールジャパンの声であることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、雑誌論文を3編公表し、学会報告を6回行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(以降)は、本研究課題に関連するIFRSの適用をめぐるパーセプション・ギャップの分析、インタビュー調査、および実験(行動)会計学の手法を用いた日本の会計専門家の判断力・倫理観の特性の分析を進める予定である。 同時に、研究成果を、ヨーロッパ会計学会(4月28日-30日、グラスゴー)などで報告する予定である。
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Research Products
(10 results)