2016 Fiscal Year Research-status Report
会計基準と会計実務のコンバージェンスおよびその相互作用に関する研究
Project/Area Number |
26380606
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
角ヶ谷 典幸 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (80267921)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | コンバージェンス / 日本の固有性 / 会計専門家の判断力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本ではなぜ会計基準のコンバージェンス(国際的統一)が慎重に進められているのかを、内外の会計基準、アンケート調査結果、証言などを用いて分析することである。平成28年度は、主として、会計基準および認識論・測定論の動向と課題を調査するとともに、日本の会計専門家の判断特性を検証した。 具体的に、財務報告におけるローカルな側面とグローバルな側面に着目しつつ、会計基準の並存化・複線化問題、会計実務や周辺制度の多様化問題、リスク要因の増大化問題などについて検討した。その結果、グローバライゼーションは個別主義の普遍化および普遍主義の個別化の相互浸透を含む多重の過程であり、複数の均衡解が存在しうるので、並存化や多様化はある意味で必然であること、並存化や多様化によってむしろリスクが緩和されている可能性があること、今後、バラエティの最適水準に関する研究が必要であることを指摘した。 また、認識論・測定論の動向を調査する作業を通じて、国際会計基準審議会(IASB)は、金融危機があった2008年頃を境にして、公正価値に基づく単一測定モデルから公正価値と歴史的原価を使い分ける混合測定モデルに提案を変化させていったこと、それに応じて利益観も資産負債観からホーリスティック観へと提案を変化させていったこと、今後、ビジネスモデル・アプローチとの関連でホーリスティック観の具体的な中身を研究する必要があることなどを指摘をした。 さらに、会計実務のコンバージェンスに関連づけながら、日本の(公認)会計士の判断特性を検証した。その結果、会計士は外部(クライアント)からの圧力の影響のみならず、内部(パートナー)からの圧力の影響を受ける可能性があること、会計士の判断は専門家意識および組織に対する愛着や義務感を醸成させることによって向上することなどが明らかにされた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、雑誌論文を7編公表し、学会報告を3回行うことができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度も、引き続き、会計基準および会計実務の動向を調査し、課題を抽出する予定である。また、会計基準と会計実務のコンバージェンスおよびその相互作用に関して総括する予定である。 同時に、研究成果を、ヨーロッパ会計学会などで報告する予定である。
|
Research Products
(10 results)