2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380607
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
草野 真樹 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (50351440)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 会計学 / 認識対開示 / ストック重視の会計 / 会計情報の有用性 / 経営者の裁量 / リース取引 / 債務契約 / 貸借対照表管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,会計情報の認識対開示について理論的・実証的研究を行い,貸借対照表を重視する会計モデルの特性を明らかにすることである。平成27年度は,まず,認識と開示の差異が経営者の裁量に及ぼす影響を明らかにするために,実証分析を行った。本研究では,リース取引に着目し,ファイナンス・リース取引のオンバランス化が経営者の行動に及ぼす影響について分析した。日本企業は,企業会計基準第13号適用時に,すべてのファイナンス・リース取引をオンバランス化する原則基準と,過去のファイナンス・リース取引のオフバランス化を容認する例外基準の選択適用が認められた。債務契約の影響を受けやすい企業は,ファイナンス・リース取引のオンバランス化を回避するために,例外基準を選択する傾向にある。さらに,例外基準を選択する企業は,企業会計基準第13号に締結したファイナンス・リース取引のオンバランス化を回避するために,ファイナンス・リース取引からオペレーティング・リース取引へとリース取引の調整を行っている。このように,認識と開示の違いから,経営者は,実体的かつ会計的に貸借対照表管理を行うのである。 次に,現在,オペレーティング・リース取引はオフバランス処理されるが,当該リース取引のオンバランス化が債務契約や市場参加者に及ぼす影響について実証分析を行った。分析の結果,オペレーティング・リース取引のオンバランス化は,債務契約に多大な影響を及ぼす可能性があることを明らかにした。とりわけ,その影響は,企業会計基準第13号以降に大きくなる可能性がある。また,格付データを用いて,格付機関がオペレーティング・リース取引の注記情報を考慮して,格付を付与しているのか否かについて分析した。その結果,格付機関は,財務諸表本体で認識される会計数値のみならず,注記で開示される注記情報も考慮して,格付を付与していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ,認識対開示についてデータ整理と実証分析を進め,着実に研究成果を公表していることから,「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,当初の研究計画に従って,会計情報の認識対開示について理論的・実証的研究を進め,貸借対照表を重視する会計モデルの特性を明らかにする。
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