2014 Fiscal Year Research-status Report
ビッグデータを活用した会計情報の有用性に関する実証研究
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26380609
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
音川 和久 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (90295733)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ビッグデータ / 会計情報の有用性 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究は、平成26年から平成28年までの3年間にわたり、ティック・データなどのビッグデータを活用しながら会計情報の有用性に関する実証研究を多角的に展開する。具体的には、決算発表に対する投資家の反応を時間単位で正確に追跡すること、証券市場の価格形成が必ずしも効率的ではないことを示すアノマリー現象の原因を探求することを主な研究課題としている。 初年度はまず、東京証券取引所が運営する適時開示情報伝達システム(TDnet)のデータベースを利用して取引時間中に年次決算情報を開示した企業の決算発表時刻を特定し、その決算発表時刻を基準とする30分間隔の時間単位に取引時間を分割し、ティック・データと呼ばれる日中取引データを用いて30分間隔の株価変化を計測し、証券市場の取引時間中に生じうる決算発表に対する株価反応・出来高反応を時間単位で分析した。 その結果、株価反応の分析では、決算発表時刻を含むその後30分間と決算発表後の昼休みの時間帯において、予想利益のサプライズと同じ方向の有意な株価反応を観察した。また、決算発表時刻の前と後のウィンドウを比較すると、決算発表前のウィンドウにおいて有意な株価の反応が観察される頻度が相対的に高かった。一方、出来高反応の分析では、決算発表時刻を含むその直後30分間に平均的な出来高が大きく増加するとともに、そのような出来高の増加は予想利益サプライズが大きくプラスまたはマイナスになるケースほど顕著になることを析出した。さらに、決算発表後の出来高の増加は、時間の経過に伴って急激に弱くなるものの、少なくともその後9時間にわたり有意な水準で持続する一方で、決算発表前の平均的な出来高は、直前の30分間を除けば、コントロール期間と同じ程度またはそれよりも少ないが、利益サプライズと出来高が有意なプラスの関係を示す時間帯も散見された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
決算発表に対する投資家の反応を時間単位で正確に追跡する研究課題については、学会において研究報告を行うとともに論文を公表した。さらに、東京大学現代会計フォーラム(2014年10月25日)および日本証券業協会キャピタルマーケットフォーラム(2015年3月9日)において、「決算発表に対する投資家反応」というテーマで研究報告を行った。現在は、こうした学会などにおいて出されたコメントに基づき実証分析の更なる精緻化を図っている。また、証券市場の価格形成が必ずしも効率的ではないことを示すアノマリー現象の原因を探求する研究課題については、2年目以降に取り組む実証分析に先立ち、最近の文献をフォローアップした上で先行研究の再整理を行った。以上のことを勘案すれば、研究活動はおおむね順調であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
決算発表に対する投資家の反応を時間単位で正確に追跡する研究課題については、分析対象期間を最新年度まで拡張すること、時間間隔をさらに短縮すること、新聞・速報ニュースなどのメディア報道のあり方が投資家の反応に及ぼす影響を考慮することなどの観点から実証分析を精緻化する。また、証券市場の価格形成が必ずしも効率的ではないことを示すアノマリー現象の原因を探求する研究課題については、会計情報が将来業績に対して有する含意を投資家が正確に理解しているか否か、証券市場が完備されていないために生じる取引コストや裁定取引のリスクがアノマリー現象の解消を阻害しているか否かなどの観点から実証分析に取り組み、研究課題の着実な推進を図っていく。
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Causes of Carryover |
統計処理ソフトウェアの更新を予定していたが、そのバージョンアップが行われる予定であったため、ソフトウェアの更新を次年度に見送ったことにより生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、前述したような研究課題を推進するため、統計処理ソフトウェアの更新のほか、実証分析に必要なデータベース(ティック個別株式データ、証券アナリストのコンセンサス利益予想データ、新聞全文記事データ)の更新費用、研究打合せ・研究成果発表のための旅費、資料整理のための謝金、適時開示情報伝達システム(TDnet)利用料などに使用する予定である。
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Research Products
(6 results)