2014 Fiscal Year Research-status Report
日中韓の比較を基礎としたわが国造船企業の競争優位・採算性改善に関する研究
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26380614
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
宮地 晃輔 長崎県立大学, 経済学部, 教授 (60332011)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金綱 基志 南山大学, 総合政策学部, 教授 (50298064)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日中韓 / 地域造船企業 / 競争優位 / 採算性改善 / 原価企画 / 生産リードタイム短縮 / ロット受注 / 組織間連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度(平成26年度)の文献・資料調査は,関連諸分野の書籍、論文のレビューを行った。産業競争力の構造に関わるものや造船企業の製造拠点が地域展開されていることからグローバリズムと地域経済に関わるレビューを中心に行った。また,初年度のインタビュー調査は日本の造船企業から開始した。調査先として造船準大手A社,Z社および造船企業における原価企画の先進的企業F社に対する調査を行っている。A社およびZ社には,地域造船企業として新造船事業の競争優位・採算性改善に対する考え方を調査している。F社に対しては,原価企画の取り組み状況と成果,標準船に対する考え方,新造船事業におけるサプライヤーとの関係,組織間連携の現状について,改善活動とバランスト・スコアカード(Balanced Scorecard:BSC)への取り組みを調査している。 初年度に得られた知見であるが,一つの可能性として新造船事業の競争力を向上させていくために,他産業である自動車メーカーの設計改善の現場との連携が有用であることが判明している。たとえば,設計において3DのCADにおける自動車メーカーの取り組みは,新造船事業に有用な部分が含まれている可能性がある。ここに造船業が他産業との連携による設計力の向上の可能性,すなわち組織間連携による新造船事業の設計力向上による採算性改善・競争優位性の獲得に関する定式化を確立する必要がある。 初年度の研究成果の一部を論文発表にて公表している。論文発表は「地域造船企業の再興のための原価企画の活用に関する研究-A社造船所の事例を通じて-」日本管理会計学会『管理会計学』第23巻第2号,2015年,17-32頁にて行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の文献・資料調査および国内造船企業へのインタビュー調査を基礎として,日本・中国・韓国の造船企業の競争優位の創出への取り組みの特徴が明らかになった。日本の競争国である中国・韓国の造船企業は大規模な設備と大量受注を背景に1隻あたりの受注価格の引き下げを行うところに特徴がある。これに対し,日本の造船企業は省エネ船(Eco-ship)や高付加価値船といった船価(受注価格)の過当競争が避けられる分野での品質を重視した船つくりを行い競争優位を創出しようとしている。また採算性の改善については,新造船事業の主要材料である鋼材(厚板)をグループ企業全体で一括購入することで単価引き下げを図る事例等が調査から確認されている。初年度の研究成果の一部を論文発表にて公表している。論文発表は「地域造船企業の再興のための原価企画の活用に関する研究-A社造船所の事例を通じて-」日本管理会計学会『管理会計学』第23巻第2号,2015年,17-32頁にて行っている。 計画がやや遅れた部分は国内造船企業に対するインタビュー調査である。初年度(平成26年度)のインタビュー調査は日本の造船企業から開始する計画であり,調査対象先5社を計画していた。計画に対して実施済みは3社であり,未実施が2社となっている。未実施となった理由は調査先担当者の業務上の都合などである。未実施分につては2年目(平成27年度)に実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に引き続き先行研究のレビューを継続するとともに,初年度に未実施となっている国内造船企業2社に対するインタビュー調査を実施する。 2年目(平成27年度)は,中国・韓国造船企業に対するインタビュー初期調査を行う。中国は上海・大連地区に所在する造船企業を調査対象先として予定している。韓国は釜山市およびその周辺に所在する造船企業を予定している。これらの調査によって日本の造船業の競争国である中国・韓国の造船企業の競争優位と採算性改善の最新の源泉を明らかにする。当該調査を基礎とした本研究の途中経過を、国内学会で発表する。これらの検討のために研究代表者と研究分担者において定期的な検討会を実施する。
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Causes of Carryover |
初年度(平成26年度),国内造船企業の訪問調査先2社に対する調査が2年目実施となったため当該旅費を使用しなかったこと,先行研究・関連諸分野の文献・資料の手配が若干遅れていることなどが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において,初年度から2年目実施となった国内調査を実施すること,および当該レビューのための文献・資料を確保することなどで,本研究でのよりよい研究成果の達成につながる研究費使用になることを見込んでいる。
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