2015 Fiscal Year Research-status Report
日中韓の比較を基礎としたわが国造船企業の競争優位・採算性改善に関する研究
Project/Area Number |
26380614
|
Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
宮地 晃輔 長崎県立大学, 経営学部, 教授 (60332011)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金綱 基志 南山大学, 総合政策学部, 教授 (50298064)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 日中韓 / 地域造船企業 / 原価企画 / 採算性改善 / 競争優位 / ESG情報 / オールジャパン体制 / 組織間管理会計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題2年目(平成27年度)における主な海外調査として,2015(平成27)年8月4日に上海雄大船舶設備有限公司に対するインタビュー調査を行った。調査目的は,上海造船関連企業からみる中国造船企業の現状と特徴を把握することであった。また,主たる国内調査としては,2015(平成27)年6月8日に日本の造船関連企業である溶接材販売企業N社の代表取締役に対するインタビュー調査を行った。調査目的は,国内造船関連企業からみる日本の造船企業に対する海外船主の評価を把握することであった。 上記調査から得られた知見としては以下の内容がある。第一は,中国造船業は国営造船企業を中心に展開されており,大規模設備を用いた大量受注による1隻当たりの受注価格の引き下げを実現することで競争優位を獲得しようとするところに特徴がある。中国の国営造船企業は政府からの技術支援(専門人材の派遣),資金支援,新造船の受注に関して強力な支援を受けている。第二に,海外船主による日本造船企業の品質・信頼性への評価は高いことが把握された。 インタビュー調査以外での主たる調査として,マリタイムイノベーションジャパン(MIJAC)での研究報告会に参加をして調査を行っている。MIJACは,規模の経済の追求により新造船事業の競争優位と採算性向上を確保しようとする中国・韓国勢に対して,オールジャパン体制で対峙しようとする日本の造船業界の画期的な取り組みである。 上記調査結果から得られた知見を含めたところで,2年目の研究成果の一部を論文発表にて公表している。論文発表は,宮地晃輔・柊紫乃「地域造船企業における原価企画の導入等による採算性改善・競争優位に関する研究―国内A社造船所の実践と日本・中国・韓国造船業の動向の視点から―」 『メルコ管理会計研究第8号-Ⅰ』2015年11月25日,65-76頁にて行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度における海外・国内でのインタビュー調査結果の整理・分析から日中韓の造船企業における新造船事業の競争力の源泉の差異が,平成26年度よりもさらに鮮明になっている。中国・韓国の造船企業による新造船事業は,規模の経済の追求による1隻当たりの受注価格の引き下げを実現することで競争優位を獲得しようとする。中国は政府からの強力な支援により,韓国は財閥により推し進められている。これに対して,日本の造船企業は地域サプライヤーとの連携や新造船事業に関係する海運会社・造船企業・舶用機器メーカー・銀行・大学等の協調関係に基づく研究開発を行うことで競争力を獲得しようとする。後者はいわばオールジャパン体制において日本の新造船事業の競争力を向上させる取り組みであり,中国や韓国では見られない組織間学習の形態を有する。この点に関して2年目の研究成果の一部を論文発表にて公表している。論文発表は,宮地晃輔「日本造船業のオールジャパン体制による競争力向上の課題―組織間管理会計を視野にいれて―」『會計2015年10月号』 第188巻第4号,森山書店,2015(平成27)年10月1日,43-52頁にて行っている。 また,国内調査の成果として造船業は省エネ船(Eco-ship)等の環境対応のための開発能力が高くなければ,受注獲得競争では劣位になることが判明している。この点に関する成果を学会報告している。学会報告は,宮地晃輔「地域造船企業の競争力向上のためのESG情報の必要性と課題」 日本企業経営学会第49回研究部会(於 広島YMCA国際文化センター本館404教室)2015(平成27)年12月26日にて行っている。 計画がやや遅れた部分は,韓国造船企業に対するインタビュー調査に関して,当該企業との受入日時(日程)の調整がつかなかったため,調査が平成28年度に延期となった。未実施となった理由は調査先担当者の業務上の都合である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度・27年度で明らかになった事実を整理し, 仮説を導出するとともに, 検証のための追加調査を日中韓造船企業や各国造船関連企業等に対して行う。本課題の成果をまとめ学会発表(日本会計研究学会九州部会)を行い,成果論文を執筆する。なお,学会発表は当初,日本管理会計学会全国大会を予定していたが,当該学会の開催時期が8月下旬から9月上旬で本課題の進捗途中にあたることから,平成29年3月開催予定の日本会計研究学会九州部会での報告に計画変更を行う。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主たる理由は,韓国造船企業に対するインタビュー調査に関して,当該企業との受入日時(日程)の調整がつかなかったため,調査が平成28年度に延期となったことがある。未実施となった理由は調査先担当者の業務上の都合である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度において未実施となったインタビュー調査について,平成28年度前半に実施することおよび仮説検証のための追加調査を実施することで,本研究での成果獲得につながる研究費使用を予定している。
|