2014 Fiscal Year Research-status Report
管理会計システムの影響機能に関する理論的・実証的研究
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26380620
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
渡辺 岳夫 中央大学, 商学部, 教授 (00294398)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 影響機能研究 / 方向づけ機能 / 動機づけ機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,組織行動に対する管理会計システムの影響機能を解明することであり,そのために網羅的な文献のレヴューを通じて,影響機能に関する研究を整理・統合し,理論的な分析モデルを構築することである。 当該年度においては,まずは国内の主要な会計ジャーナルに掲載された,管理会計システムの影響機能に関する先行研究を過去50年間に遡り抽出し,レヴューを行った。抽出に当たっては,渡辺(2013)の影響機能研究に関する次の定義を参考にした。 また,レヴューにあたっては,研究対象の種類(対象とする管理会計システムあるいは会計手続きの内容)と範囲(特定のシステムの全体か一部か),目的機能(影響の方向づけ機能と動機づけ機能のいずれか一方か,あるいは両方か),理論ベース(経済学,社会学,心理学など,心理学の場合,例えば期待価値理論,達成動機理論などより詳細に分類),および研究方法(規範的研究,ケース/フィールド研究,サーベイ研究等)などの視点から整序した。 最後に,レヴューの結果について,その概略を示す。第一に,過去50年間の間,会計学研究全体に占める管理会計研究の割合は,おおむね20%前後であり,管理会計研究全体に占める影響機能に関する研究は,おおむね10%前後と非常に少ないことが明らかとなった。とはいえ,2000年以降はミニ・プロフィットセンター・システムの研究が急増し,徐々に影響機能研究が増えつつある。第二に,2000年前後を境に,影響の方向づけ機能に関する研究が減少し,動機づけ機能に関する研究も徐々に増えつつあることが分かった。第三に,理論ベースは,経済学ベースの研究は年代に関わらず一定数コンスタントに行われているのに対して,近年,心理学ベースの影響機能研究が増えつつあることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的に照らして,おおむね順調に研究が進捗している理由は,次の通りである。第一に,当該研究課題に対して振り向けることができると当初予定していたエフォートを,予定通りに傾注できたということである。第二に,文献収集を順調に行うことができたということである。最後に,文献レヴューの際に,重視するポイントを,研究対象の種類と範囲,目的機能,および理論ベースの3つに事前に絞り込んでいた点を挙げることができよう。チェックするポイントを限定したため,限られた時間の中で,多数の文献をレヴューすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を今後推進するために必要な方策は,とりわけ組織心理学・社会心理学・教育心理学に関連する構成概念(自己決定感,統制感,自己決定感,有意味感),およびインタラクティブ・コントロールといった影響機能研究において今後重要な位置づけが想定される概念について,綿密な文献レヴューを行うことである。 また,文献レヴューによって抽出された先行研究の成果を統合し,管理会計システムの方向づけ機能と動機づけ機能の相互作用関係を内包した理論的なモデルを構築することもまた,非常に重要である。なぜなら,ここで構築された理論的な分析モデルは,平成28年度以降に予定されている実証研究のベースとなり,本研究課題を推進するうえで,非常に重要な位置づけを占めているからである。
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Research Products
(1 results)