2015 Fiscal Year Research-status Report
日本の農林漁業の発展に向けた簿記会計の役割 -オランダ・ドイツの事例を参考に-
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26380626
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
戸田 龍介 神奈川大学, 経済学部, 教授 (00271586)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 農業簿記 / 農業税務簿記 / 農業統計調査 / 農協簿記 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目における主要な研究成果としては、博士論文「日本における農業簿記の研究―農業税務簿記、農業統計調査、農協簿記の3つの流れを中心に―」を上梓し、九州大学より博士学位(経済学)を授与したことである。本論文の要旨は、これまで日本において「農業簿記」と称されたものの中には、青色申告決算書の作成を目的とする「農業税務簿記」、生産費の統計的推計を目的とする「農業統計調査」、そして金融業務を中心とした現在の農協の多様な業務を効率的に管理運営することを目的とした「農協簿記」という3つの流れがあるが、そのどれもが農業簿記および複式簿記の本質的な前提・目的に基づくものではなかったことを論じたことである。 複式簿記の本質的な前提とは、取引「記録」に基づくというものであり、農業簿記および複式簿記の本質的な目的とは、記録に基づき農産物の原価を算定すること、つまり損益計算にある。しかしながら、「農業税務簿記」は、記録ではなく農業所得「標準」に基づき青色申告決算書を期末に一括で作成することを目的としている。また、「農業統計調査」は、統計職員が記録ではなく統計的平均に基づき、農家への所得補償算定の基礎である生産費を統計的に確定することをその目的としている。さらに、「農協簿記」については、そもそもその主たる対象が「農業」ではなく「金融・保険業務」であることや、その効用が農協という一組織に限定されることから、そもそも農業簿記として捉えることが困難である。 以上のような考察の結果、特に20世紀において日本で展開された農業簿記は、そのいずれもが、複式簿記本来の前提・目的とは異なった前提・目的を有していたことを明らかにしたことが、2年目における主要な研究成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果を上げる上で不可欠であった、ヒアリング調査が順調に進んでいることが大きい。日本における農業簿記の実態を知る上で、文献のみに頼るやり方では限界があり、どうしても当事者に直接ヒアリング調査をする必要があった。このヒアリング調査が順調に進んだ一つの要因として、ヒアリングに応じて頂いた方から、さらに次のヒアリング対象者を紹介して頂くということが、かなり多数にのぼったことがあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
国内の研究については、京都大学農業簿記施設の推移や、京大式簿記(自計式農家経済簿記)の発案者である大槻正男氏の学説について、さらに研究を深める予定である。また、国外については、オランダ、ドイツに直接赴き、各国における農林漁業簿記について調査する予定である。特に、オランダのフードバレーに位置する先進農企業、およびドイツにおける林業企業が、農産物および生物資産に対して公正価値測定をどのように実際に行っているかについて、詳細に調査する。
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Causes of Carryover |
支出予定額の微細なズレ
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に使用
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Research Products
(11 results)