2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380639
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
中條 良美 阪南大学, 経営情報学部, 准教授 (00387383)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 四半期財務情報 / 財務諸表分析 / デュポン分析 / 実質GDP成長率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、財務情報を市場全体で集計した場合に、それがマクロ経済に対してどのような示唆を有するかを検証した。個別企業の分析から一旦離れてマクロレベルでの財務情報に焦点を合わせたのは、利益などの時系列動向自体がマクロ経済の推移から大きな影響を受けるはずであり、その影響を明確にするためには集計された利益の動きを確認することが不可欠であると考えられたからである。 そのために、まず2003年12月期以降直近までを対象に、市場における時価総額の大きさが上位100社に入る企業の四半期財務情報を加重平均した上で、その大きさが1期先の四半期GDP成長率とどのような関係にあるのかを調査した。2003年以降にサンプルを限定しているのは、四半期での財務報告制度が2008年に確立したばかりであり、2003年12月期以前においては十分なサンプル数を確保することが困難なためである。 このとき、上位100社のみを分析対象としたのは、サンプル数の確保を優先するためだけではなく、簡便な財務情報の集計によってマクロ経済予測が円滑になることを検証したかったからである。すなわち、低コストな財務諸表分析によって、日本経済全体の動向を見通す新たな指標が得られるならば、財務情報がマクロ経済分析に対しても有用な情報内容を提供するかもしれないのである。 分析結果は概ね直観を支持する内容であり、大規模企業の純営業資産利益率(RNOA)とデュポン分析に基づくそのドライバーは、1期先のGDP成長率と統計的に有意な相関を示した。わずか100社の四半期財務諸表に対して簡便な収益性分析を施すだけでも、マクロ経済の予測を大きく改善することができるかもしれないのである。今後は、ミクロレベルでの財務情報の時系列特性が、いかなる経済要因によって変化するのかを調査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究の準備段階として位置付けられており、主に財務情報の時系列特性を検証した先行研究を渉猟することに費やされた。1960年代からの論考を整理するとともに、マクロレベルでみた財務情報の役割について簡単な実証分析を実施することによって、今後の研究の方向性が明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究からこれまでに明らかにされた事実をもとに、財務情報の時系列特性を規定する経済要因について、いくつかの仮説を提示する。それに基づき、財務情報、投資収益率、ガバナンス構造といった必要なデータを収集した上で、提示された仮説の検証に当たりたい。その際、仮説を裏づける理論モデルの構築も同時に進める予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた計量経済学に関する図書の購入について、すでに購入済みの他の図書と内容が近似していたため取りやめたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り延べた8,886円は、現時点で追加的に必要となった、時系列分析の手法に関する書籍の購入に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)