2015 Fiscal Year Research-status Report
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26380639
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
中條 良美 阪南大学, 経営情報学部, 准教授 (00387383)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 企業の社会的責任 / 環境関連投資 / 環境会計情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、企業による環境関連投資を題材に、かかる投資を手掛ける企業がおかれた事業環境と会計情報との関係を調査した。一般に、環境保全のための投資が社会的に要請される企業は、石油化学といった政府の環境規制を受ける産業に集中している。しかし、企業に環境関連投資を迫る動機が規制のみならば、当該産業に属する企業の間で投資水準が均等化するはずである。ところが、上場企業が公開する環境報告書を繙けば、環境保全にどれだけのコストを投じるかは、たとえ同じ産業に所属していても千差万別なのである。 それでは、政府による規制を除いて、企業が環境関連投資に従事する目的は何であろうか。ここでは、社会的責任の遂行(CSR)と経済的利潤の追求のふたつを主要な動機として掲げている。企業の経済的役割に即して言えば、利潤の最大化こそ企業に課されるべき最終目標となる。その立場からすれば、企業イメージの向上といった実利がなければ、環境関連投資は排除されてしまう。逆に、企業が多様な利害関係者の要求に応える必要がある以上、環境汚染を無視するわけにもいかないはずである。 本年度の研究では、以下の手順で、環境関連投資を実施する企業が、CSRと利潤の両方の動機を満たすように行動していることを明らかにした。まず、上場企業がウェブ上で公開する環境報告書から環境会計情報を抽出した。つぎに、環境保全コストの大きさを説明するおもな変数として、株主資本利益率(ROE)と裁量的会計発生高をそれぞれ計算した。後者は情報を発信するうえでの不誠実さをあらわす指標である。分析の結果、環境保全コストに対して、ROEは正の、裁量的会計発生高は負の影響をそれぞれもたらすことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、環境問題へのエクスポージャーという、日本企業が直面する特殊な制度環境を題材に、財務会計情報と企業行動の関係に実証的に迫ることができた。最終年度は、企業の事業環境をより包括的に分類したうえで、財務情報の持続性の違いを説明する理論を構築する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度における文献研究を通じて仮説が設定され、本年度の研究によって実証研究のアウトラインが形成された。サンプルの選定とデータの収集もある程度進捗している状況なので、最終年度は仮説の立証に向けて分析を進めたい。
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Causes of Carryover |
学生アルバイトの補助によるデータ収集が予定よりも進捗し、その分の謝金が不要になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
収集したデータの正確性を検証するため、学生アルバイトを増やす予定であり、その分の謝金に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)