2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380659
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
中野 康人 関西学院大学, 社会学部, 教授 (50319927)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / ネパール / 相対的剥奪 / カースト / 計量社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「相対的剥奪」が社会における「主観的幸福」や「不満」そして様々な「社会的な行動」に与える影響をネパール社会を対象にして実証的に明らかにすることにある。平成26年度は、次年度以降の大規模調査票調査の準備を行う計画であった。具体的には、(1)先行研究の整理、(2)パイロット調査データの分析と本調査の調査項目検討、(3)現地調査を予定し、かつ実行した。とくに、二度の現地調査と国際学会での発表を通じて、以下のような成果を得た。 まず、先行研究とパイロット調査データの分析からは、カースト間の満足感の違いについて、相対的剥奪で説明できる項目と、相対的剥奪だけでは説明できずにカーストの効果が残る項目とが存在することが判明した。例えば、収入や幸福感や安心感については相対的剥奪でその差異を説明できるが、教育や民主化や住環境に関する満足感については相対的剥奪に加えてカースト属性が依然として効果をもつ。単純に他者との比較でなりたつメカニズムと社会的属性に何某かの意味が残るメカニズムとが存在していることがわかった。この成果は、相対的剥奪というメカニズムがどのような条件で作用し、また、社会属性という非相対的なカテゴリがどのように維持・作用するのかを探求する上で重要な知見といえる。 現地調査では、パイロット調査の調査地点であるカトマンズ・キルティプールに加えて、インド国境に近い南部平原にあるジャナクプールでの準備作業を行った。ネパール・ネワールのカースト間格差だけでなく、カトマンズ盆地と南部平原地方との格差が個人の意識レベルで存在し、両者お互いに「自分たちが剥奪されている」認識をもっている状態が確認された。次年度以降の調査票調査を実施する上で剥奪の評価軸を指し示す重要な知見を得たといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査地点の検討もおわり、概ね計画通りに研究は進んでいる。ただし、入手できたサンプリング台帳(選挙人名簿)が最新のものではなかったため、新調査地点での調査票を用いた小規模パイロット調査は実施していない。この点のみ、次年度以降に持ち越しとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
調査票内容の再検討と最新の台帳の入手を早急に完了し、次年度は調査票調査の実施を予定する。前者については、現地の研究者との協議が進んでいる。後者については現地の行政機関とのやりとりが必要なため、流動的な現地社会情勢に配慮しつつ、現地研究者の協力を得て進めていく。
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Causes of Carryover |
サンプリング台帳入手の遅れから、予定していたネパールでの小規模調査票パイロット調査を実施しなかったため、現地調査の規模が当初計画よりも縮小された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、申請時に計画していた大規模調査票調査に先立ってパイロット調査を実施するために、今回発生した次年度使用額を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)