2015 Fiscal Year Research-status Report
中国内モンゴル自治区における牧畜民の定住化に伴う地域社会の再編に関する実証研究
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26380666
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
何 淑珍 東北大学, 情報科学研究科, 博士研究員 (60624848)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会学 / 地域調査 / 牧畜地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国内モンゴル自治区のジョウ黄旗を調査対象地として、定住化による牧畜地域社会の変容と今後の展望を、事例研究という手法で明らかにするものである。平成27年度は、本研究の2年目であり、第3回と第4回現地調査を実施した。 第3回現地調査を7月に実施し、第4回現地調査を8月に実施した。統計的・歴史的資料を収集するとともに複数農家への個別インタビューを行った。 牧畜地域である調査対象地は、1980年代初頭の「家族請負責任制」を初めとする現代化政策と、都市的生活の浸透および機械化の進展といった生活と生産における近代化を経て、地域社会のもっとも基礎集団であるホト(小集落、概ね5~8世帯から成る。漢語では自然村と表記されることもある)および牧畜民の生活それ自身に個別化が進んだことが明らかになった。井戸の共有と牧草地の共同利用を基盤とした遊牧生活から、井戸と牧草地の個別利用が定着した。牧草地を共同利用することで持続的な牧畜業が可能だったものが、個別化が進行することで牧草地の不足をもたらし、さまざまな方策をとらなければならなくなった。こうしたことが、生活面における変容にも影響を与えている。また、ホトにおける共同作業の減少が著しくなった。 今年度実施した研究の成果を代表者が日本村落研究学会大会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
定住化による牧畜地域社会の変容を実証調査する、という目的は、複数の牧畜民への個別インタビューを重ねることによって、概ね達成できたと言える。インタビュー調査を通して得られたデータは、現在の地域社会の進行状況の実態を把握している。 牧畜地域社会の今後を展望する、という目的は、後継者の状況を把握することによって明らかにしようと試みている。最終年度である平成28年度において、全体の補充調査を実施する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度では、放牧+畜舎飼育の放牧形態を取っているホトと、「移民村」での10年を経てからの元のホトを重点に調査を実施した。そこで、ホトにおける共同作業の減少や牧草地不足といった個別化の進行が、牧畜や酪農などの生産面だけではなく、相互扶助や家族関係、教育にまで、さまざまな問題を引き起こしている。後継者問題も含めて、個別化を前提にして牧草地の共同利用の道をもって克服できるかどうかを模索していきたい。
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Research Products
(1 results)