2014 Fiscal Year Research-status Report
トランスナショナルな移動経験を通した日比ダブルの若者のアイデンティティ構築
Project/Area Number |
26380672
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小ヶ谷 千穂 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 准教授 (00401688)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 日比国際児 / JFC / ハーフ/ダブル / トランスナショナルな移動経験 / 若者 / 語り / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
20代前半の「日比ダブル」の若者を研究対象する本研究は、当事者の語りから彼らの「ダブル」としてのアイデンティティ構築過程と、そこにおけるトランスナショナルな移動経験との相関について明らかにしていくことを目標とする。本年度は、首都圏に居住する日比ダブルの若者との非構造化インタビューを開始した。当初の計画どおり、同一人物に複数回インタビューを行うことで、インタビューを経て生じた当事者の心境の変化などを二度目のインタビューで話題するという手法も採用することができた。今年度の調査からは以下のような知見が得られた。①日本で主として生育している日比ダブルの青年が、母親の「外国人性」に気づいていくプロセスには複数の段階がある。②学齢期(特に小学生時)に感じとった母親の「外国人性」と、成人後に(再)発見されるそれとは質的に大きく異なっている。③自らが「ダブル」あるいは「ハーフ」である、という認識は成人後の現時点で、日比双方の文化の「バランサー」としての役割、として認識される側面がある。④その役割の認識は、フィリピンの親戚訪問や、フィリピン人母の友人たちとの交流の中で本人たちに経験・認識されていく「自分の中のフィリピン人っぽさ」に裏打ちされている。ただし今年度実施したインタビューはいずれも女性であったため、次年度以降は、男性も含めてインタビュー件数を増やし、上記のような認識にジェンダー差がどのように関係しているのかを考察しつつ「ダブル」意識の複層性について研究を深めていきたい。なお、第87回日本社会学会研究大会において、テーマセッション「移動する子ども・若者の国際社会学」を主催し、関連するテーマで研究を進める国内外の研究者と「移動する子ども・若者」研究について活発な研究交流を推進することができた。また、比較研究として移動を経験した日系ブラジル人の子どもに関する調査も実施できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査対象者とのラポール構築が重要な課題にあって、おおむね順調にインタビューやそのためのネットワークづくりを進められている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究期間2年目においては、1年目に構築した調査対象者とのネットワークを十全に活かし、より計画的にインタビュー調査およびその結果の分析を進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
本年度は当初予定したよりも謝金がかからず、また物品費(特に書籍)に関しては、関連する他の研究費による支出が多かったために、研究費に残金が出た。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費35万円(エスニシティ・アイデンティティ・質的調査方法論・国際児問題関連図書、和書・洋書、プリンタートナー、ICレコーダー)ほか/旅費:外国旅費59万5千円(成田―フィリピン渡航費9万円×2回=18万円、現地宿泊費(1泊@9千円×20日間)18万円、日当(20日間×@5)10万円、現地交通費(レンタカー1日@6×20日間)12万円、フィリピン国内航空券(1万5千円×3往復)4万5千円/国内旅費15万円/謝金:60万円(現地リサーチアシスタント5万円、テープ起こし謝金40万円、調査対象者謝礼6万円、資料整理9万円)/その他(通信費、複写費、会議費)20万5千円
|
Research Products
(2 results)