2016 Fiscal Year Research-status Report
ポスト「原発依存」社会に向けた地域公共圏の構築についての研究
Project/Area Number |
26380673
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
渡邊 登 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (50250395)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | コミュニティ / 公共圏 / 原発 |
Outline of Annual Research Achievements |
「ポスト福島第一原発事故における地域コミュニティの持続的『発展』『再生』の可能性」(トヨタ財団2012年度研究助成プログラム)、そして本研究で、立地地域としての柏﨑市・刈羽村、周辺地域として長岡市、新潟市の住民意識調査、及び柏﨑・刈羽地域のリーダーへのインタビュー調査を行い、生活意識、生活構造、社会構造の変容とそれを基底とする地域公共圏の構築可能性の考察を行ってきた(渡邊、2017)。そこでは、依然として原発再稼働による地域経済の活性化を期待しつつも(原発停止による経済への影響は限定的であっても、マイナス効果が実態以上に評価される)脱「原発依存」への模索に苦悩する地域像が明らかとなった。そして、これに対する周辺地域住民の意識は約8割が脱原発を志向するが、5割近くは立地地域の脱「原発依存」へのソフトランディングを支持するものであった。以上の結果から、今後同地域の短期的な方向性を予測することは困難ではあるが「3.11原発事故以前」の状態に戻ることは想定しにくい。本調査研究を踏まえて、今後も定点観測を続けていくことが必要である。 さらに、日本と同様に従来から積極的な原発推進路線をとる韓国を対象とし、原発立地地域・建設予定地域等に焦点をあて、地域社会の住民の生活意識・生活構造、社会構造の「揺らぎ」を考察して日本の事例を相対化しつつ、地域コミュニティの持続的な「発展」「再生」という視点から、課題解決のモデルを提示するために、従来から調査研究を行ってきた、放射性廃棄物処理場建設反対運動を自主管理の住民投票で白紙撤回させ、その後独自の地域づくりを展開しつつあった全羅北道扶安郡等の地域を対象として、行政関係者、地域リーダーへの聴き取り調査を行い、同計画に対する賛成・反対で産み出された地域社会のコンフリクト(亀裂状況、内部分裂過程)及び、その困難な克服途上を明らかにすることが出来た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた現段階での成果として、『「核」と向き合う地域社会』リベルタ出版、2017年を出版した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究の「ポストフクイチ調査」の結果を踏まえ、他の原発立地地域では類例のない推進派・反対派を含めた熟議の場である(2002年の同原発のトラブル隠しをきっかけに県、柏﨑市、刈羽村によって設立された市民主体の)「透明性を確保する地域の会」への継続調査、及び柏﨑市将来構想のための「これからの柏﨑とエネルギーを考えるシンポジウム」、「第5次総合計画審議会」等の場での議論に関して内容分析を行うとともに、構成メンバーへのインタビューを実施する。また、周辺地域(新潟市等)に関してはコラボレイション型の「脱原発」運動として新潟市とパートナーシップ協定を結び再生可能エネルギーによる持続可能な地域づくりを志向する多様な市民によって構成される「おらってにいがた市民エネルギー協議会」に焦点をあてる。これらは、今年度より、「『ポストフクイチ社会』に向けた原発立地県における地域公共圏構築についての研究」(基盤研究(C)平成29年度~31年度)として継続研究を行う。
|
Causes of Carryover |
本調査研究の成果として、『「核」と対峙する地域社会』(リベルタ出版、2017年)の出版を企画して、その出版費用として800,000円を予定し、年度内の支払い完了を目指したが、出版日程が少々遅れ、次年度(本年4月)に支払いが延びる可能性が生じたこと、また、それに従って成果報告を調査協力者、関連研究者に寄贈するための支払いも同様に次年度に伸びることになった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
「理由」欄で述べたように、本調査出版費用と成果報告費用として、使用する。
|