2015 Fiscal Year Research-status Report
統合的農村開発とコミュニティ組織-三重県櫛田川流域圏の農業集落を事例に-
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26380677
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
河村 則行 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (30234131)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 統合的農村開発 / 社会関係資本 / コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
地方都市の中心市街地では空洞化が進み、空き地や空き家の増大が、農村部では、農産物価格の低下、高齢化、後継者の不在などにより、離農化する農家が増大しており、農地などの維持管理が困難になり、耕作放棄地が増大している。本研究の目的は、産業政策としての農業政策だけでなく、農家と非農家の交流・コミュニケーションを促す地域政策や生態系の保全などの環境政策を推進することを統合的農村開発としてとらえ、地域資源の活用・保全や地域計画の策定など、社会関係資本やコミュニティ組織がはたす役割を分析することである。農業は、農地の集積化など利用調整が必要であること、また地域の共同水利施設を利用することから、地域における信頼関係、社会関係資本が重要であり、コミュニティをベースにしないと持続可能ではない。松阪市は、中心部は城下町、商人のまちとして発展し、周辺部には田園地帯が広がっており、田園風景、川、歴史的町並みなどの地域資源が存在している。本年度は、三重県松阪市の田園地帯(平坦地)の2地区(阿坂、機殿)、中心部の1地区(松阪中央)の計3地区(小学校区)を選び、住民向けのアンケート調査と、地域住民組織である住民協議会へのヒアリング調査を実施した。このアンケート調査のねらいは、各地区の地域活動への参加状況、地域のつながり=社会関係資本の構造を明らかにし、それらが住民のまちづくりにどのような効果をもたらすのかを検証することにある。また、農村地域では圃場整備などのハードな基盤整備を進めてきたが、持続可能であるためには、育くむためのソフトな地域活動や利用ルールが重要であり、地域資源の利用と維持管理をマネジメントをする組織として住民協議会(まちづくり協議会)を位置づけ、その活動内容を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は市役所の協力も得て、予定通りに松阪市の3つの地区(阿坂、機殿、松阪中央)を選定し、松阪市の選挙人名簿から計約840人無作為抽出でアンケート調査を実施し、450人の回答(回収率53%)を得た。住民の社会的属性、地域集団・地域活動への参加、まちづくりへの意識・関心度について貴重なデータを収集することができた。その地区の住民協議会へのヒアリング調査も実施し、各地区の地域課題、組織の活動内容の現状と課題についてデータを収集した。このようにアンケート調査とヒアリング調査を予定通り実施することができ、地域のつながり、活動や意識、住民協議会の組織構造、活動内容について貴重なデータを収集することができた。また、理論的には、エリアマネジメントや地域住民組織の先行研究をフォローし、地域資源の維持管理を行い地域の持続可能性を高めることなど、エリアマネジメントや地域住民組織が果たす役割について検討することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、今年度実施したアンケート調査のデータ分析を行い、どのような属性の人がどのような集団・組織に参加し、何を目的に,積極的に活動しているのか、地域活動のコミットメント、人と人のつながり=社会関係資本を作り出す要因を分析する。そして、アンケート調査とヒアリング調査のデータをふまえて、3地区を比較し、社会関係資本(ネットワーク)の構造の違いとそれが地区のまちづくりに及ぼす効果を明らかにする。最近都市部では、行政によるハードの開発だけでなく、育てること、維持管理を重要視して、その管理を共同で負担することで、エリアの魅力・価値を高めるエリアマネジメントが注目されており、その概念を農村地帯にも適用できるかどうか、都市部と農村部のコミュニティ組織の違いについて検証したい。最後に人口減少、高齢化が進み、地域の持続可能性が課題になるなかで、行政、市場との関係においてコミュニティ(住民協議会等)が果たす役割を明らかにする。
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