2016 Fiscal Year Research-status Report
限界集落への世代論的アプローチによる2010年代問題の検証と対応課題の抽出
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26380686
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
山下 祐介 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (90253369)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 限界集落 / 過疎/過密 / 地方創生 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年に始まった地方創生(まち・ひと・しごと創生)の展開は、限界集落・過疎問題の課題設定を大きく変えてしまった。①地域別の過疎問題から、日本全体の人口減少への展開(日本全体の限界集落化)。②東京一極集中への問題の焦点化と、集中化の末端局面としての限界集落問題へ。2016年度は引き続きその問題整理を行うこととした。 現段階でこの論理が正しいかどうかは別として、①②を集約すると、③日本全体の人口の適正配分の問題にゆきつく。その際、この数年の政策およびメディア・世論の論調は、大きく次の二つの方向に分かれて議論されたと整理できる。1)一方で地方移住が進み、人口集中から還流へと転換する兆しが見え始めている。2)他方で末端部分の解消ないしはスリム化、コンパクト化が必然であり進める必要性。 本研究ではこうした政策や世論の動向についての分析を進めつつ、それが各地域に、あるいは地域政策にどのような影響を及ぼし、実態をどう導いていくのかを検証している。限界集落・過疎地域だけを見るのではなく、人口減少/東京一極集中との関わりの中で、日本社会の総体としてどのような展開があったのか。とくにトピックとして学校統廃合、公共交通の問題に焦点をあてるとともに、復興集中期間を終えた東日本大震災・福島第一原発事故被災地域の人口問題についても検討した。また歴史的手法も提要しつつある。 また青森県の各市町村には限界集落のその後と、これらの政策の動向との関わりについて調査を実施、2017年度にその結果を分析することとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地方創生が関わる人口減少/東京一極集中については、全国各地の動向を見据えながら、総合的な分析/検討を進めることができている。当初予定の各地域の細かな限界集落化の動向は青森県各市町村への調査を実施したことにより、その分析をまってある程度進捗しうる手応えをえた。研究の最終年度に向けて、研究目的はおおむね順調に達成しつつあると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
全国各地の動向把握については、人口減少問題そのものに踏み込むやり方から、学校統廃合や公共交通問題へのトピック化から迫るやり方を試行し、一定の枠組みを持って2017年度にはいくつかの事例を具体的に検討することになっている。また各地域の集落問題の発生とその予測について、その歴史的背景に関わる調査の実施ないしそのための理論立てを試みており、集落の発生・成立、その維持と国家政策・経済動向・人口移動との関わりを、マクロな視点から理論的に整理する努力をはじめ、これも一定の方向性をつかみある。集落はいかに成立し、いかなる場合に存続し、またいかなる場合に解消するのか(すべきか、せざるをえないのか、あるいは逆に維持しなければならない理由が出てくるのか)。限界集落問題に関する一定の理論的実証的成果を提示できるところまで本研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
2016年度は、研究代表者は地方創生等で各方面から見解の提供を求められて各地に赴いたことで一部旅費を消化せずに実施できた。他方で、とくに福島第一原発事故をめぐる集落の存続について各政策課題やメディアを通じて研究の還元を求められ、年度末に研究の停滞が生じ、予算を予定通り消化できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究は順調に進んでおり、計画通り遂行するためにも、今後行う調査の進行、分析などに調査補助員を積極的に導入するなど工夫し、資金運用のあり方を改善していく予定である。
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