2016 Fiscal Year Annual Research Report
An ethnomethodological analysis of interactional structure of Tojisha-Kenkyu practice
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26380688
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Research Institution | Mie Prefectural College of Nursing |
Principal Investigator |
浦野 茂 三重県立看護大学, 看護学部, 教授 (80347830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水川 喜文 北星学園大学, 社会福祉学部, 教授 (20299738)
中村 和生 青森大学, 社会学部, 准教授 (70584879)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エスノメソドロジー / 当事者研究 / 精神障害 / 語り / 相互行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、精神障害者の当事者研究場面を収録し、エスノメソドロジーの手法によって分析することにより、その相互行為的構造と障害当事者にとっての意義とを明らかにすることである。結果は次の通り。 (1)精神障害者の自助活動において困難経験を言語化することの意義がこれまでに数多く指摘されてきた。これを踏まえ、本研究はその意義の根拠として次の点を明らかにした。困難経験の言語化には、困難経験じたいのなかにそなわる経験者の知識を、専門的知識による症状化に先立って存在する独自の現象として明示化するという意義がある。 (2)当事者研究は、困難経験の言語化を支える様々な相互行為的技法のひとつである。この技法の解明に先立ち、本研究はこれらの技法が対処すべき課題を明らかにした。経験の語りの定義的特徴は、経験の主体と語り手との同一性にある。このため自己の経験を語る場合、その経験に対する評価がその経験の主体だけでなく語り手自身にも帰属されうる。このことが、一方において語り手をしてその困難経験を語ることを差し控えさせ、他方において受け手をして共感的反応を超えてその経験を検討することを差し控えさせる。こうした可能性がが、困難経験の言語化とそれを協同で検討する当事者研究にとって対処すべき課題となる。 (3)当事者研究場面の収録データの分析にもとづくと、困難経験の言語化にそなわる上記の課題に対し当事者研究の実践は次のような相互行為的技法を開発してきたと考えることできる。(a)順番の組織方法を通じ語りに対する参加者の反応を無関連化すること。(b)経験の語りにおいて想定される語り手と経験の主体との同一性を切り離すこと。これらの技法を用いることにより、当事者研究は、参加者の困難経験の言語化を促進し、この経験について協同的理解・解明を試みていると考えることができる。
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